加齢は避けられない現象ですが、身体の一部が年を取る速度は部分ごとに異なることが分かっています。
特に、脳の老化速度には私たちの生活習慣が深く関わっています。
スウェーデンのヨーテボリ大学が主導した最新の研究では、認知機能に問題のない70歳の高齢者を対象に、脳年齢を推定するための生物学的指標を分析しました。
この研究から、脳を若々しく保つための具体的な方法が示されています。
今回のテーマとしてまとめていきます。
参考記事)
・These Habits Can Keep Your Brain Looking Young at 70(2025/01/01)
参考研究)
・Biological brain age and resilience in cognitively unimpaired 70-year-old individuals(2025/01/01)
MRIスキャンとAI技術を用いた脳年齢の評価
研究では、磁気共鳴画像法(MRI)を使用して脳年齢を評価しました。
研究チームは、ディープラーニングAIモデルを活用して18,000件以上のMRIスキャンを分析し、脳年齢を高精度で予測できるアルゴリズムを構築しました。
このモデルは、生活習慣や医療条件、認知機能テストの結果と血液サンプルのデータを組み合わせて使用されています。
研究結果によると、身体の不活動、糖尿病、脳卒中、炎症、血糖値の上昇などが、老化した脳と密接に関連していることがわかりました。
また、男女間でいくつかの違いも観察され、例えば血糖値の影響が男性の脳年齢により強く現れることが確認されています。
この性差は今後の研究でさらに詳しく調査される予定です。
Karolinska Instituteの神経生物学者Anna Marseglia氏は、「血管に悪影響を与える要因が脳年齢に影響を与えるという結果は非常に重要である。この結果は、血管の健康を維持することが脳の保護にもつながることを示している。」と説明しています。
脳の若さを保つためのポイント
研究チームが739人の高齢者を分析した結果、脳の若さにおいて最も重要な要因は血管の健康であることがわかりました。
血管が健康であると、脳への血流がスムーズになり、老化を遅らせる効果が期待できます。
研究では、以下の生活習慣が血管の健康を促進し、脳を若々しく保つ可能性があるとしています。
・定期的な身体活動
運動は全身の血液循環を改善するだけでなく、脳への酸素供給を高め、老化プロセスを遅らせる
・バランスの取れた健康的な食事
野菜、果物、魚、ナッツ、全粒穀物を多く含む食事は、抗炎症作用や血管保護効果が期待できる
・禁煙
喫煙は血管に深刻なダメージを与え、脳卒中やその他の神経障害のリスクを増加させる
・血糖値の管理
血糖値を急激に上げない食事が脳の老化防止と密接に関連している
認知症予防への応用
脳が老化すると、アルツハイマー病などの認知症のリスクが高まります。
しかし今回の研究は、認知機能の低下を予防し、脳の回復力を高めるための手がかりを提供しました。
これまでの研究でも、血糖値や貧困などが脳年齢に関連する要因として挙げられており、多くは個人や社会の取り組みで改善可能なものです。
Marseglia氏は「近年になり新しいアルツハイマー薬が登場したが、全ての認知症患者に効果があるわけではない。そのため、病理学的老化プロセスに対抗するための脳の回復力を高める方法を研究する必要がある。」と述べています。
研究チームは今後、ホルモンや社会文化的要因など、生物学的決定要因に注目し、性差が脳の老化にどのように影響するかを詳しく調査する予定です。
また、2025年中には、中年期および老年期における社会的健康(例:社会的な繋がり、支援、ストレス管理)が脳の回復力に与える影響を重点的に研究するとしています。
まとめ
・血管の健康は脳の若々しさを保つ重要な要因
・身体活動や健康的な生活習慣が脳年齢の維持に寄与
・AI技術を活用した新しい研究が認知症予防の可能性を示唆
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