「怪しい食べ物を食べた後にアルコールを飲むと、食中毒のリスクを減らせる」という話がSNSで注目を集めています。
しかし、専門家たちはこの考えに警鐘を鳴らしています。
アルコールが本当に食中毒を防ぐ効果があるのか、またその方法が安全で有効なのか、研究データや専門家の見解を以下にまとめていきます。
参考記事)
・Wait—Can Alcohol Really Prevent Food Poisoning?(2024/10/02)
・About Four Steps to Food Safety(2024/04/29)
参考研究)
・The Protective Effect of Alcoholic Beverages on the Occurrence of a Salmonella Food-Borne Outbreak(2002/03)
・The Protective Effect of Alcohol on the Occurrence of Epidemic Oyster-Borne Hepatitis A(1992/07)
・Wine Has Activity against Entero-pathogenic Bacteria in Vitro but not in Vivo(2001/01/)
アルコールが食中毒を防ぐのか?
TikTokでは、あるユーザーが「食べ物を食べた後にアルコールのショットを飲むと、病気(food poisoning)を防げる」という動画を投稿し注目を集めました。
その理由は単純で「アルコールが食中毒のリスクを減らすという研究があるからだ」と言います。
「もし自分が食べた食べ物が古かったり、悪いものだったりした場合、法的な飲酒年齢に達していて健康な状態であるなら、ハードリカーのショットを飲むと病気になるリスクを減らせる」とそのユーザーは主張しました。
では、この主張は真実なのでしょうか?
専門家は「部分的には肯定できるが、そんな単純なものではない」と指摘しています。
ニューヨーク大学の消化器科医であるRabia De Latour医師は、「アルコールは消毒剤としては病原菌を殺すことができるが、飲酒事態が健康に悪影響を与えるため、食中毒を防ぐための方法として推奨されるべきではない」と述べています。
実際、正しく調理されていない食べ物を食べた後にアルコールを飲むと、かえって状況が悪化する可能性があると指摘されています。
アルコールの作用と研究結果
過去のいくつかの研究は、アルコールが食中毒を防ぐかもしれないという可能性を示していますが、いずれも確定的な結果ではありません。
例えば、2002年に発表された研究では、サルモネラ菌に暴露された人がアルコールを摂取した場合、摂取しなかった人よりも発症率が低かったという結果が得られました。
しかし、参加者が51人と少数であるため、確実な結論には至っていません。
また、1992年の研究では、10%以上のアルコール濃度の飲み物が、汚染されたカキを食べた人々に「保護効果を示した」と報告されていますが、これもサンプルサイズが少なく信頼性には限界があります。
さらに、ワインに含まれる成分が抗菌作用を持つ可能性があるという主張もありますが、2001年に行われた研究では、ワインがマウスのサルモネラ菌感染を防ぐ効果はないと結論づけられています。
食中毒を防ぐための対策
怪しい食べ物を食べた後にアルコールを飲むのではなく、食中毒を防ぐための基本的な方法を知っておくことが重要です。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)では、以下の対策を推奨しています。
・手洗いや調理器具の清潔を保つ
・正しい温度で食材を調理する(特に肉類には温度計を使用すると良い)
・料理が終わったらすぐに冷蔵保存する
・異なる食材を分けて保管し、交差汚染を避ける
(※交差汚染:病原菌の汚染度が高いものが汚染度の低いものに接触することで汚染が広がる現象)
清潔に保って、必要がなければ分けて冷蔵する……。
どれも基本的なことですが、その当たり前が何かしらの表紙にすっぽ抜けてしまうことがあるのが人間です。
食べ物においても、対処ではなく対策(予防)が大切ということですね。
まとめ
・アルコールが食中毒を防ぐという説はTikTokで広まったが、専門家はそれが安全な方法ではないと警告している
・小規模な研究で一部のデータはあるものの、アルコールが食中毒を予防する確かな証拠はなく、かえってリスクを高める可能性がある
・食中毒を防ぐには、手洗いや正しい温度での調理、食品の適切な保存などの基本的な衛生対策が重要
コメント