科学

“PFAS ”による若年層の腎機能への影響を追跡した初めての研究

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雨や水路、私たちの血流にまで浸透し、私たちの生活から完全に逃れることがほぼ不可能な「フォーエバーケミカル

 

フォーエバーケミカルは、パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)総称で、これに類する物質の種類は1万以上もあるとされています。

 

これらの化学物質は、分解が難しく、生物に蓄積しやすい上、広範囲に広がっていく特性があることから、各国でのリスク管理が求められる事態となっています。

 

今回紹介するのは、これらの物質が及ぼす腎臓へのダメージについてです。

 

腎臓は、血液から余分な水分や毒素をろ過し、体内の水分と電解質のバランスを保つ役割を担っています。

 

しかし、最新の研究によって、PFASが腸内細菌を含む体内の微生物群に変化をもたらし、腎臓の健康に影響を及ぼしている可能性が指摘されています。

 

以下の研究を参考にまとめていきます。

 

参考記事)

Forever Chemicals May Damage Kidney Function, Evidence Shows(2024/11/09)

 

参考研究)

The potential mediating role of the gut microbiome and metabolites in the association between PFAS and kidney function in young adults: A proof-of-concept study(2024/10/17)

Studies on the Toxicological Effects of PFOA and PFOS on Rats Using Histological Observation and Chemical Analysis(2008/07/26)

 

 

若年層の腎機能への影響を追跡した初めての研究

 

今回、南カリフォルニア大学によって行われた研究は、若年層を対象とした初めての長期的な調査で、フォーエバーケミカルの曝露が腎機能に与える影響を検証するものでした。

 

17歳から22歳の若者78人を対象に、4年間の追跡調査が実施されました。

 

調査対象者は主にヒスパニック系で、メタボリック症候群(代謝性疾患)に対するリスクが高いグループに属していました。

 

研究では、血液サンプルを用いて7種類のフォーエバーケミカルの曝露レベルを測定し、腎機能の変化を追跡しました。

 

その結果、曝露が高い人ほど腎機能が相対的に低下していることが示されました。

 

The potential mediating role of the gut microbiome and metabolites in the association between PFAS and kidney function in young adults: A proof-of-concept study より

 

具体的には、全体的な曝露量が標準偏差で1つ増加するごとに、血中のクレアチニン濃度が2.4%低下しました。

 

クレアチニンは腎機能の指標とされており、ろ過機能が低下している兆候です。

 

若年期は腎機能が成熟する重要な時期であり、この時期に腎機能が損なわれると、その影響は長期にわたって健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

今回の結果から、フォーエバーケミカルが腎機能に対してわずかではあるものの確かな悪影響を及ぼしている可能性が示唆されました。

 

 

腸内細菌の変化と腎機能の低下

 

さらに、フォーエバーケミカル腸内細菌にも影響を与えている可能性が明らかになりました。

 

45人の便サンプルを分析した結果、特定の腸内細菌群が減少しており、これが腎機能低下と関連していることがわかりました。

 

特に、腎機能の低下のうち33%が特定の腸内細菌とその代謝産物の変化によるものであり、さらに別の細菌グループの変化が腎機能の低下に対する50%の影響を示唆していました。

 

南カリフォルニア大学の公衆衛生科学者、ハイリー・ハンプソン氏によると、「PFASは、腸内の有益な細菌の減少や抗炎症代謝産物の減少に関連していることが判明した。これにより炎症や酸化ストレスが発生し、腎機能が低下する可能性がある」と述べています。

 

  

今後の研究と課題

今回の研究は、少人数を対象とした小規模なものであり、腎機能を完全に評価できるわけではないため、今後さらなる研究が求められます。

 

しかしながら、この調査結果は、フォーエバーケミカルが腎臓をはじめとする人体の器官にどのように悪影響を及ぼすかを理解するための重要な足がかりとなります。

 

特に、フォーエバーケミカル腸内細菌を変化させ、それが腎機能にまで悪影響を与える可能性があることが示されており、今後の研究では腸内環境と腎機能の関係に注目する必要があります。

 

 

まとめ

・フォーエバーケミカル(PFAS)が腎臓に蓄積することで酸化ストレスや炎症が発生し、腎機能の低下を引き起こしている可能性が示唆された

・フォーエバーケミカルが腸内の有益な細菌を減少させ、抗炎症代謝産物を低下させることで、腎機能に影響を及ぼしていることが判明した

・これらの化学物質の長期的な影響や腸内細菌との関係をより深く理解するため、さらなる研究が必要

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