科学

アルツハイマー病の原因は自己免疫疾患である可能性がある

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アルツハイマー型認知症の原因物質といえば、“アミロイドベータ”がよく知られています。

 

認知症患者に見られる老人斑の大部分を構成しているたんぱく質でもあり、知らず知らずのうちにシミのように脳に沈着していくと物質です。

 

近年では、このアミロイドベータを除去する薬剤も開発され、認知症の治療に前進が見られたかに思われています。

 

しかし、アミロイドベータと認知症との関係には未解明な部分が多く、原因究明前に薬剤が一般化されることで、思わぬ副作用や長期的な弊害が生じる考える研究者もいます。

 

今回の記事では、そんなアルツハイマー病とアミロイドベータについてのまとめになります。

 

参考記事)

Alzheimer’s May Not Actually Be a Brain Disease, Expert Reveals(2024/08/19)

 

参考研究)

Alzheimer’s disease as an autoimmune disorder of innate immunity endogenously modulated by tryptophan metabolites(2024/08/19)

 

 

アルツハイマー型認知症とアミロイドベータ

 

2022年7月、science誌は、nature誌に掲載されたアルツハイマーについての論文(2006年)が捏造されたデータを基に作られた可能性があると報告しました。

 

nature誌の論文は、ミネソタ大学のシルヴァン・レスネ氏による研究で、アルツハイマー病の原因がアミロイドベータの蓄積によるものであるというものです。

 

これに対し、ヴァンダービルト大学の神経科学者で医師であるマシュー・シュラグ氏は、「得られた実験結果は望ましい結果ではなく、そのデータは…仮説によりよく適合するように変更された可能性がある。」とし、研究の一部の数値が切り貼りされている形跡があると指摘しています。

 

レスネ氏によるアミロイドベータ説は、研究の発表以降長く支持されてきた考え方です。

 

この研究に基づいてアミロイドベータの蓄積を阻害する薬剤が開発されていますが、2021年6月、米国食品医薬品局は、その使用を裏付けるデータが不完全で矛盾していたにもかかわらず、アデュカヌマブをアルツハイマー病の治療として承認しました。

 

これには医師からも賛否が分かれており、一部の医師はアデュカヌマブを決して承認してはならないと主張している者もいます。

 

  

アミロイドベータの呪縛から逃れる

 

上の結果から、何年もの間科学者たちは、アミロイドベータと呼ばれるタンパク質の塊の形成を防ぐことによって、アルツハイマー病の治療法を考え出そうとしてきました。

 

しかし、残念なことに、この異常なタンパク質の形成を研究する試みは、有用な薬や治療法を発見するに至っていません。

 

これは、アルツハイマー病とアミロイドベータの関係を見直す必要があるのかもしれません。

 

トロント大学ヘルスネットワーク化学教授兼クレンビル研究所(所長ドナルド・ウィーバー氏)は、この呪縛から逃れるため、アルツハイマー病の新しい理論を考案しています。

 

彼らは、過去30年間の研究に基づき、「私たちはもはやアルツハイマー病を主に脳の病気とは考えていない。アルツハイマー病は主に脳内の免疫系の障害であると確信している」と述べ、脳疾患ではなく“免疫異常”であることを主張しています。

  

体内のすべての臓器に見られる免疫システムは、体を保護するために働く細胞と分子の集まりです。

   

人がつまずいて転倒すると、損傷した組織を修復するのに役立ったり、ウイルス感染や細菌感染を感知すると、これらを排除するために戦います。

 

これとまったく同じプロセスが脳内に存在します。

 

頭部外傷があると、脳の免疫システムが反応して修復を助け、脳に細菌が存在する場合、免疫システムは細菌を無力化しようとします。

 

クレンビルのう研究所の研究者たちは、アミロイドベータは異常に産生されたタンパク質ではなく、むしろ脳の免疫系の一部である正常に発生する分子ではないかと考えています。

 

脳の外傷や細菌の存在によってアミロイドベータが反応するため、脳の一部に蓄積するように見えているというのです。

 

しかし、ここで問題が発生します。

 

細菌の膜と脳細胞の膜の両方を構成する脂肪分子が似ているために、アミロイドベータは細菌と脳細胞の違いを見分けることができず、保護するはずの脳細胞そのものを誤って攻撃してしまうのです。

 

これが脳細胞機能の慢性的な喪失につながり、最終的には認知症となると研究者らは考えています。

 

これは、アルツハイマー病の原因は自己免疫疾患であることを意味します。

 

逆に、アミロイドベータを完全にシャットアウトできると考えると、細菌や損傷から脳を守ることができず、さらなる病害や後遺症に苦しむ可能性も考えられます。

  

自己免疫疾患にはバセドウ病や間接リウマチなど多くの種類があり、ステロイド系の薬剤など効果的な治療法が発見されています。

 

一方、これらの治療法はアルツハイマー病に対しては機能しないため、さらなる研究によって効果的な治療法を確立することに期待が寄せられます。

 

 

まとめ

・アルツハイマーの原因は自己免疫疾患である可能性がある

・アミロイドベータ説は間違いではないが、アミロイドベータ自体が悪者であるわけではない

・アミロイドベータが細菌と脳細胞の区別ができないために、脳の一部を攻撃してしまっている

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