【前回記事】
この記事は、書籍「世界はラテン語でできている」を読んで興味深かった内容について抜粋して紹介する記事です。
この本は、古代ローマから用いられてきた言語が現代にどのように残っているのかについて書かれています。
政治、宗教、科学だけでなく、美術やゲームなど幅いジャンルに浸透している言葉について知ることで、世の中の解像度が上がって世界が少し楽しくなるかもしれません。
今回のテーマは、“マグナ・カルタのマグナとカルタ”についてです。
マグナ・カルタのマグナとカルタ
〜引用&要約〜
5世紀後半、ローマ帝国の勢力が弱まり、東西分裂なども経て西ローマ帝国が滅亡してしばらく経った中世において も、ラテン語の影響は強いままでした。
それを証明するように、当時のヨーロッパにおいて法律関係の文章はラテン語で書かれていました。
その中で現在も有名なのは“Magna Charta(マグナ・カルタ)”ではないでしょうか。
日本語では「大憲章」と訳され、1215年にイングランドのジョン王が諸侯たちの圧力に屈して調印した勅許状です。
この勅許状は王室の権限を制限する内容であり、憲法の草分け的存在です。
他にもラテン語で記されたイギリスの有名な史料として、Domesday Book(ドゥームズデイ・ブック) があります。
これは、11世紀ごろにウィリアム1世の命令によって作成された全国的な土地調査の記録です。
世界初の土地台帳として知られており、キリスト教において“最後の審判”を意味する“Domesday”という言葉から、「世界の終わりに神が行う“最後の審判”は変えることはできなものであり、それと同様にこの記録も変えることができないほど厳格なものだ」という意味を元に、後世の人間によって付けられた名前です。
さて、マグナ・カルタに話を戻すと、“magna(マグナ)”はラテン語で“大きい”という意味で、日本列島にある「フォッサマグナ」という地帯の名前にも名残があります。
フォッサマグナ(fossa magna)の意味は“大きな溝”です。
地震の規模を示す“magnitude(マグニチュード )”も、語源語源をたどるとラテン語の“magnitudo(大きさ)”になり、magnitudoはmagnaの派生語です。
他にも、「壮大な」という意味の英語magnificent の語源にもなっていたりと、ラテン語のmagnaは規模や大きさ、重要度を表す言葉に広く関係しています。
では“Charta(カルタ)”の方はどうでしょう。
Charta自体は「憲章 」という意味ですが、元は「パピルス紙」を指す言葉です。
現存する最古(紀元280年)のキリスト教の聖歌が書かれているとされるパピルス
「パピルス紙」という言葉から、そこに書かれるもの自体を指すようになり、「書類」そして「憲章」も意味するようになりました。
英語の“charter(憲章)”の語源にもなっています。
その他にも英語のcard(カード)やchart(海図)、carton(箱、カートン)、ドイツ語のKarte(カルテ)やKartell(カルテル=元は“契約書”を意味する)の語源にもなっています。
日本語の「カルタ」は、ポルトガル語のcartaを通じて入ったものですが、これもラテン語のChartaが由来です。
〜引用&要約ここまで〜
よく意味は分かっていないけど何故か覚えている言葉の上位に位置する“フォッサマグナ”。
この言葉にはラテン語の息吹がかかっていたのですね。
フォッサマグナは、東北日本と西南日本の境目に存在する地帯です。
大きな溝というほどなので、谷の凹みやそれに沿った線が地図上で表記されているように覚えている人も多いかと思います。
しかし実際は、以下の図のような広大な面です。
南北方向にU字型の溝(主に岩石中生代・古生代の地層からなるもの)があり、その溝の中に新しい時代の岩石(主に新生代の地層からなるもの)が詰まっている形になります。
地図上でみるとかなり広い範囲がフォッサマグナなんですね。
恥ずかしながら、この図でイメージするまで“面”で捉えるものという認識がありませんでした……。
ちなみに、ボーリング調査が実施された位置からおよそ6000mの深さがあるとされ、北アルプスの標高を3000m、越後山地の標高を2000mとすると、逆さにしたヒマラヤ山脈がすっぽり入ってしまうほど深い溝になるのそうです。
さらにちなむと、フォッサマグナを発見したのは明治時代に日本で地質調査を行ったハインリッヒ・エドムント・ナウマン氏(1854~1927年)です。
ナウマンと言えばナウマンゾウが出てきますが、ナウマン博士が日本で発見されたゾウ(ナウマンゾウ)の化石を研究したことにちなんで名付けられました。
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