科学

【研究】緑のある環境で生活している人はテロメアが長く、老化が遅い可能性がある(ノースカロライナ大学)【要約】

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自然に囲まれることは、精神の健康免疫システムの発達に至るまで、私たちの体に驚くべき効果が得られます。

  

海外には治療の一環として、自然の中で過ごすことを勧める医師もいるほどです。

   

人に大きなメリットを与える自然ですが、どうやら寿命や老化に関係のあるテロメアにまで良い影響を与える可能性があるのだとか……。

   

今回はそんな自然と老化に関する研究の紹介です。

   

参考記事)

People Living in Green Areas Seem to Age Slower at The Cellular Level(2023/12/11)

   

参考研究)

The relationship between greenspace exposure and telomere length in the National Health and Nutrition Examination Survey(2023/12/20)

   

   

自然への暴露が老化を遅らせる

 

ノースカロライナ州立大学が7,827人を対象に行った研究によると、人種、経済的地位、飲酒者か喫煙者かに関係なく緑地への露出が多いほどテロメアの長さが長くなり、緑豊かな近所に住むことのプラスの効果が示唆されることが分かりました。

   

同大学の社会生態学者アーロン・ヒップ氏は、「この研究は、細胞レベルで分析した緑地の有益な影響と、緑地が環境への害を相殺するのにどの程度役立つかを定量化する試みである」と語っています。

 

【注意:テロメアと寿命】

テロメアは46 本の染色体のそれぞれの末端にある DNA の繰り返し部分により、遺伝子分子が靴紐のプラスチックの端のようにほどけるのを防ぎます。

  

細胞が分裂するたびに細胞内のテロメアは短くなり、最終的には細胞がその遺伝物質を分裂できなくなり、その細胞株は死滅します。

   

多くの場合、テロメアの消失が寿命と関連付けられることが多いですが、寿命を迎えた人々の細胞が皆テロメアがなくなっている訳ではありません。

   

相対的にテロメアの短い、もしくは消失していることが多いとされているという点に注意が必要です。

   

しかし、寿命を迎える人は総じてテロメアが短い傾向があるため、細胞の機構に関係して重要な役割を担っていることは確かです。

   

以上を踏まえた上で続きをまとめます。

   

エディンバラ大学の地理空間アナリスト、スコット・オグルツリー氏は、「このため、テロメアは生物学的年齢、つまり細胞の消耗度を示す重要なマーカーとなり、ストレスなどの多くの要因がテロメアの消耗速度に影響を与える可能性があることが知られている」と説明しています。

   

過去の研究からも、そういったストレスに対する軽減策として、緑に囲まれることが選択肢に挙げられます。

   

植物は私たちを環境から保護し、隔離するのに役立ち、熱波を防ぎ、大気汚染や騒音公害を軽減する役割を果たします。

   

緑地は身体活動や社会的交流を促進し、犯罪のリスクの低下など治安を保つ働きもあります。

   

本研究の分析では、「サンプルの平均減少率を考慮すると、緑地は人の生物学的年齢を2.2~2.6歳減少させる可能性がある」とオグルツリー氏らは計算しました。

   

また分析が、緑のある環境との関わりが強い人種とそうでない人種がいることも考慮に入れる必要があると指摘されています。

  

研究対象となった非ヒスパニック系白人は緑豊かな地域に住んでおり、全体的に人種・民族の多様性が低い傾向にありました。

   

さらに、その中の女性だけを考慮した場合、自然による影響はそれほど明確ではなく、追加の病気のリスクや追加の社会的ストレスがテロメアの長さに大きな役割を果たしている可能性があることも示唆されています。

   

つまり、テロメアの長さが長くなるのは、自然に触れるメリットだけではなく、自然汚染や生活環境などのマイナス要因が少ないことからくる可能性があるということです。

   

しかし、私たちは働き詰めの日々やスマホなどの電子機器などによって知覚においても物理的現実においても、これまで以上に自然から隔離されるようになりました。

   

もしかしたら、自然から何かを得るよりも、今あるストレスから開放された方がテロメアにとっては良いのかもしれません。

   

自然に触れることができるということは、それだけの余裕があり、電子機器に依存していないということでもあります。

   

自然とテロメアの因果関係は明らかではありませんが、何らかの関係性があるとして今後も研究を進めていくとしています。

   

この研究の詳細は“Science of The Total Environment Volume 905”にて確認できます。

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