地球外生命体の発見は人類が追い求めるロマンの一つです。
一般的に知られている限り、地球以外に人のような知的生命体が存在する証拠は見つかっていません。
しかし、単純な生命体はどうでしょう。
地球では、深海の奥深くでは太陽を必要とせいず、熱水噴出孔のエネルギーを利用して生きる生物も多く存在します。
そういった生物の中には、部分的に界面表層の生物の死骸の沈殿物を利用するものもいるため、完全に太陽の影響を除外することはできませんが、熱水のエネルギーや噴出孔から得られる化学物質を頼りに生態系が作られている場合もあります。
そのように太陽の光を必要としない環境を利用する生物が他の惑星や衛星にも存在するかもしれない……。
今回はそんな期待に心動かされる最新研究の一つを紹介します。
参考記事)
・New Hope to Find Life on Enceladus After Scientists Detect Phosphorus(2023/06/15)
参考研究)
・Detection of phosphates originating from Enceladus’s ocean(2023/06/14)
エンケラドゥスでリンの兆候
土星の衛生エンケラドゥスは、氷の下に地球規模の水の海が存在するとされる星の一つです。
ドイツ ベルリン自由大学の地質科学研究所は、エンケラドゥスが宇宙空間に放出した物質を分析することで海の組成を調べました。
分析の結果、海水中にナトリウムイオン、カリウムイオン、塩化物イオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン及びアルカリ性のpHを推定することができました。
また、生物の必須元素である“リン”を含むリン酸塩が比較的豊富に存在することも発見しました。
有機化学においてリンは、生命にとって重要な6つの元素の一つです。(酸素、炭素、水素、窒素、カルシウム、リン)
この発見によって、エンケラドゥスに生命が存在する可能性が大きく高まりました。
研究者は、「リンは、惑星に生命が生まれるために必要不可欠な元素ですが、これまで地球以外の海では検出されませんでした。過去の地球科学モデリングではエンケラドゥスや他の星の海にはみさえは少ないだろうと考えられていました」と述べ、リンの発見が驚くべきことであることを主張しています。
月の7分の1程度の大きさしかないエンケラドゥスは、一見すると大したことがないように見えますが、その凍てついた外見の下では様々なことが起こっています。
土星探査機カッシーニがエンケラドゥスから吹き出す間欠泉を初めて検出した時、土星との重力相互作用によって衛生内で熱が発生し、液体に保たれた地球規模の海が存在することが明らかになりました。
地球は主に太陽の熱を利用して生命を育んでいることが多いですが、太陽の光が届かない海底などでは、例外的に熱水噴出孔の熱や、そこから放出される硫化物をエネルギーとして生きる生物たちがいます。
エンケラドゥスに液体の水があるとしたら、地球のそういった環境同様に熱水噴出孔を軸とした生物圏が作られている可能性は大いにあります。
このリン酸塩と土星との関係から、生命への期待は大きく高まることになりました。
研究では、カッシーニの宇宙塵分析装置からデータを取得し345個の粒子を総合的に分析しました。
そのうち9つの粒子について、ナトリウムとリンの化合物であるリン酸ナトリウムに特有のスペクトルの特徴を確認しました。
このリン酸ナトリウムが、エンケラドゥスではオルトリン酸塩として容易に利用できる事を示唆しています。
研究者は、「地球の海の平均的なリン酸塩の存在量の数100倍はある」と述べています。
このリン酸の発生源は、液体の海の下にある“炭素質コンドライト岩”と呼ばれる岩石の1種で構成されるコアではないかと考えられています。
研究チームはこの予測の上で研究をすすめ、リンはアルカリ性で炭酸塩を多く含む海水とこの岩石との相互作用による産物であることを発見しました。
つまり、エンケラドゥスにはリンが豊富に存在するだけではなく、その供給源まであるということです。
有機化学的に生命の存在に必要な水と、6つの元素のうち最も重要なリンの存在は、地球外生命体の存在を期待させてくれるには十分と言えます。
まとめ
・土星の衛星エンケラドゥスの噴出物からリンの反応を得られた
・リンは生物を構成する必須元素の一つ
・エンケラドゥスに生命がいる(いた)可能性が考えられる
中々ロマン溢れる研究ですね。
リンはDNAを構成する3つの要素(塩基、糖、リン酸)でもあるため、遺伝子を受け継ぐという生物として活動する動機の根源を支えているとも言えます。
もしかしたら本当に地球外生命体がいるかもしれませんね。
一体どのような組成なのか、やはり甲殻を持った生物が多いのか、活動のエネルギー源はなんなのか……。
自分が生きているうちにその真偽を知りたいところですが、その点は常にアンテナを張って今後の科学の発展に期待したいところです。
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