【前回記事】
“ウェッジウッド”に並んで人気のあるデンマーク陶磁器ブランド“ロイヤルコペンハーゲン”。
磁器の名門として、その名を聞いたことがないという人の方が少ないのではないでしょうか。
コペンハーゲンを代表するブルーのペイントは、現在でも人を引き付けてやまない高貴の象徴です。
今回はそんなロイヤルコペンハーゲン開窯の歴史についてまとめていきます。
ロイヤルコペンハーゲンの歴史
1710年、ドイツがマイセンを開窯したことでヨーロッパに白色磁器の製作技術が生まれましたが、その製法は門外不出の技術として守られてきました。
1761年にウェッジウッドがクリームウェア(白磁)を焼き上げる技術を確立したことをきっかけに、ヨーロッパにおける陶磁器の文化はますます発展していきました。
その頃、後のロイヤルコペンハーゲンの創業者であり当時の鉱物学者であるフランツ・ハインリヒ・ミュラー(1732~1820年)は、カオリン、珪石、長石など硬質磁器の原料とされているものを使い、何度も試作をしていました。
書籍から得た知識を基に実験を繰り返していましたが、磁器作成には程遠く、膨大な時間とお金を費やしました。
特に重要な原料とされるカオリンはデンマークでは入手が困難であり、遠く離れたアジアからの輸入に頼ることが多かったと言われています。
しかし、1755年にボーンホルム島にてカオリンが発見されたことで、デンマークにおいても磁器の製造に大きな足掛かりができました。
その後、様々な製法を試したミュラーは、1773年遂にデンマーク初の磁器焼成に成功します。
翌年、彼は磁器工房の開業を計画しますが、投資家として計画に興味を示す者はほとんどいませんでした。
そんな中、彼の磁器に目を付けた人物がいました。
デンマーク王妃ユリアーネ・マリーです。
元々はドイツ出身のユリアーネですが、彼女の兄(ブラウンシュヴァイク・ヴォルフェンビュッテル公爵)は、後にドイツ7大名窯の一つに数えられる“フュルステンベルク磁器工房(1747年創業)”を創立した人物です。
ユリアーネ自身も磁器に造詣が深く、自国で磁器を作り上げることは外交上でも重宝されていたため、ミュラーの磁器工房に対して財政的な支援を惜しみませんでした。
こうして1775年、後のロイヤルコペンハーゲンとなる“デンマーク王立磁器工房(The Royal Porcelain Manufactory)”が開窯されました。
ちなみに、ユリアーネは兄妹でよく連絡はとっていたものの、磁器製造についての秘密は決して明かさなかったそうです。
当時の王族・貴族にとって磁器は、それほどまでに重要なものだったことが分かります。
ロイヤルコペンハーゲンのロゴには3つの波線があります。
これは、デンマークを貿易によって栄えさせた3つの主要海峡“大ベルト海峡”、“小ベルト海峡”、“エースレンド海峡”を表しています。
この波線は、ユリアーネ王妃の発案であり、現在でも全ての、ロイヤルコペンハーゲン製品に記されています。
ブルーフルーテッド
ブルーフルーテッドはロイヤルコペンハーゲンの工房が開窯されて最初に制作された、テーブルウェア(食卓に並ぶ食器類)です。
工房にとって最初のパターンである証として、ブルーフルーテッドの全ての製品には“1”の番号が絵付けされていました。
「されていました」というのは、今はこのペインティングはしていません。
1980年代頃になると、バックスタンプのハンドペイントを廃止したことに伴って番号の手書きもなくなっていきました。
↓
その代わりに別の番号が割り当てられるようになり、製造された年代や製品の照合ができるようになっています。
ブルーフルーテッドの“フルーテッド”という言葉は、“縦じま”のことを表わしています。
カップやソーサー全体に縦線が入っているものがありますが、これがまさにフルーテッドの証です。
青色のペイントがされたロイヤルコペンハーゲンを目にするときには、注意して見てみるとより面白いかもしれませんね。
A級品とB級品の見分け方
最後に、コペンハーゲンのA級品とB級品の見分け方についてお伝えして今回の記事を終わりにしようと思います。
見分け方は、バックスタンプ(背面ロゴ)にスクラッチ痕があるかどうかが挙げられます。
画像のようなロゴの上に引っ掻き傷のような線が入っていることが分かります。
これがB級品である目印になります。
B級品はいわゆる訳あり商品です。
B級品といえど、絵柄、装飾、造形が気に入れば、比較的安価で満足度の高い掘り出し物が見つかるかもしれませんね。
まとめ
マイセン、ウェッジウッド、ロイヤルコペンハーゲンと続けて紹介してきました。
当時の磁器人気は凄まじいものだったようですね。
特に贈り物としては最適で、下手な金品を贈るよりも、美しい磁器が重宝された時代でもありました。
背景も考えるとなかなか面白いジャンルですね。
そんな歴史の一端を知って磁器を目にするのもまた面白いと思います。
コメント