コバルトという名前はドイツに伝わる山の精“コボルト”に由来します。
その昔、ドイツの鉱夫たちがコバルトから銀を取り出そうとしました。
しかしいくらやっても思うような結果にならなかったため、これは山の妖精であるコボルトの仕業だと考えたのです。
当時コバルトの利用価値はそれほど重要なものではありませんでした。
コバルトが真価を発揮するのは、他の元素と一緒になった時です。
合金として重要な材料であり、ニッケルやクロム、モリブデンなどに添加して作られるコバルト合金は、高温に耐え摩耗もしにくい、さらに鉄より錆びにくく酸やアルカリにも侵食されにくい性質を持ちます。
その性質からガスタービンやジェットエンジンという高温、高負荷が生じる装置に用いられています。
コバルトブルー
美術の歴史において、美しい青色を扱うのは非常に高価で手のかかるものでした。
17世紀、フェルメールが描いた真珠の耳飾りの少女には鮮やかな青色が表現されています。
この青はラピスラズリを粉末にして作られたもので、ウルトラマリンと呼ばれています。
当時ラピスラズリは金と同等の価値があるとされていたため、このように鮮やかな青色を使える画家は限られていたようです。
後にこのウルトラマリンの代替品の開発を命じられたフランスの科学者ルイ・テナールが、コバルト塩とアルミナ混合物から青色を発見。
これが後にコバルトブルーとして愛用されるようになってきました。
コバルト爆弾
コバルト爆弾は原子爆弾及び水素爆弾の周囲をコバルトで覆った爆弾です。
Salted Nukes(塩漬けの核爆弾)の一種であり、残留性の高い放射線を撒き散らす恐るべき爆弾です。
1950年、核開発への警告も含め、レオ・シラードによって原理が発表されました。
【塩漬け爆弾・塩爆弾】
この塩漬けの核爆弾は、中性子爆弾の原理を応用した兵器です。
中性子爆弾は原爆や水爆よりも熱戦や爆風などの破壊力が低く作られている反面、中性子によって生物を殺傷する能力に長けています。
核反応を起こす容器にニッケルやクロムを使う(本来はウラン238等)ことで、中性子を効率よくばら撒くことができるようになっています。
原爆や水爆と違い、ある程度のコンクリートや鉛を通過し生物に影響を与えるため、広島、長崎型の爆弾では有効だと思われる地下鉄等への避難やコンクリートによる防壁も殆ど意味を成さなくなります。
都市の設備を残すことも目的としている中性子爆弾は、多くの場合残留する放射線が少なくなるよう作られます。
一方このクロムやニッケルで作られる容器をコバルトや金(いわゆる塩)など限られた物質を混ぜたものを塩漬け爆弾と言い、終末兵器として恐れられています。
中でもコバルトが混ざった塩漬け爆弾を使用した周囲では1世紀以上もの間、人間が住める環境ではなくなるとのことです。
大きな理由は中性子によって生成された放射能を持つコバルトが消滅しにくいことが挙げられます。
原子量59であるコバルトが、核分裂反応によって放出される中性子の影響によってコバルト60が生成。
このコバルト60が爆発とともに広範囲にまき散らされます。
コバルト60の半減期(放射性物質が半分になるまでの量)が5.3年と長く、長期間に渡って汚染が続いてしまいます。
更に空気中に舞い上がった放射性物質が雲まで到達すると、現在の技術では取り除く方法が無いため、気流に乗って放射性物質が世界に撒き散らされることになるのです。
塩漬け爆弾は構想段階上の代物で、製造や実験が報告された例はありません。
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