サムソンとデリラ
イスラエルにサムソンという怪力の男がいました。
素手で獅子を倒すほどの力の持ち主で、イスラエルと敵対するペリシテ人を大勢殺してきました。
ある日サムソンはペリシテ人のデリラという女性に恋をします。
デリラは、多くのペリシテ人を殺された恨みを晴らそうと考えています。
サムソンの力を恐れているペリシテ人は、このデリラを利用しサムソンの強さの秘密を聞き出そうとします。
サムソンは本当のことを教えようとはしませんでしたが、デリラ誘惑に負けとうとう強さの秘密を明かしてしまいます。
「俺の強さは、生まれてから一度たりとも切ったことがないこの髪にあるのだ。」
それを知ったデリラとペリシテ人たちは、サムソンの隙を突き髪の毛を切り落とします。
力を失ったサムソンは両目を抉られ、牢で粉を挽かされることになってしまいました。
その後しばらくして、神殿にて宴会が開かれました。
ペリシテ人の領主たちは、サムソンを面白半分で余興の場に引きずり出します。
牢から出たサムソンは、あの力強かった頃の髪に戻っています。
サムソンはこの時を待っていました。
「今一度だけ力を・・・。」
と唱え、神殿の柱を押し倒すと瞬く間に神殿は崩壊。
下敷きになり命を失ったペリシテ人は、かつてサムソンが殺した数よりも多かったそうです。
美術としてのサムソンとデリラ
バロック時代、ピーテル・パウル・ルーベンスはデリラに誘惑され眠るサムソンを描きました。
ペリシテ人がサムソンの髪の毛を切り落とす場面ですね。
給仕の老婆がロウソクで明かりを灯しながら覗く姿がまた不気味です。
同じくバロック時代、レンブラント・ファン・レインの一枚です。
彼はサムソンの目がペリシテ人に潰されるその瞬間を描きました。
力を奪われた上、目を潰され苦痛にゆがむサムソンと恨みを晴らし奥でほくそ笑むように笑うデリラが対比されているよう感じます。
ルーベンス同様、バロック特有の明暗をはっきりさせる書き方が特徴的です。
アンソニー・ヴァン・ダイクは捕縛されるサムソンを描きました。
優雅な印象を与えるシルクと光の要素によって、サムソンよりもデリラに目がいきます。
サムソンの腕は、兵士に対しては拳を固め、デリラに対してはなでるような優しい触り方をしています。
しかし彼の表情は「どうして…。」と言わんばかりの悲しい表情です。
ギュスターヴ・モローはサムソンとデリラを水彩画を用いて描きました。
妖艶なデリラの腕の中でサムソンが眠っています。
これから起こる悲劇に少し切なさを感じます。
またモローはサムソンの視点から描くデリラも描いていたりします。
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