ソドムとゴモラは旧約聖書の物語に出てくる町の名前です。
町には悪が蔓延っていたため、神はふたつの町を滅ぼしてしまおうと考えます。
それを知ったアブラハムは、悪い者と一緒に良い者も滅ぼしてしまうのは良くないと異を唱えます。
神は、
「正しい者が10人いたら、町を滅ぼすのはやめることにしよう。」
と言い、天使たちを町に派遣しました。
天使の試し
天使たちは町につくと、アブラハムの甥であるロトと出会います。
ロトは天使たちを自宅に招いてもてなします。
やがて、天使の噂を聞きつけたソドムの町の住人がロトの家に押しかけ、
「お前の家にいた連中はどこにいる。なぶりものにしてやるから連れてこい。」
とわめきたてます。
それに対しロトは、自分の二人の娘を差し出し、天使に手を出すことは勘弁願うよう申し出ましたが、住人は納得しませんでした。
天使たちはこれでは救いようがないと判断し、ソドムとゴモラを滅ぼすことにします。
天使たちはロトに、妻たちを連れてソドムから逃げるよう言い、町が滅ぼされている最中は決して後ろを振り向かないことを約束させます。
ロトは近くの町まで逃げおおせることができましたが、妻は滅ぼされている様子を振り返って見てしまったため、塩の柱にされてしまいます。
美術としてのソドムとゴモラ
中世絵画の世界からルネサンス期を経ても題材はほとんど変わりませんでした。
ロトとその家族がソドム(とゴモラ)から脱出するところを描く画家が多いです。
そして、後ろを振り向いてしまったロトの妻は大体塩柱にされています。
アルブレヒト・デューラーは、業火に焼かれるソドムとゴモラから家族で逃げる様を描きました。
絵の左上で既に妻は塩柱にされ、ロトと娘たちは先の見えない不安が見てとれます。
ソドムとゴモラで起こったような“悪”に対する教訓画のような印象を受けます。
ルーカス・ファン・レイデンは一連の物語として絵に収めました。
絵の半分より右側には、神の怒りに触れた町とそこから逃げ出すロトと娘たちを描いています。(右端ではやっぱり妻が塩柱にされています。)
絵の中央を飾るのは、酒に酔って娘を抱くロトの姿描かれています。
この物語の続きに、ロトが子孫を残すために娘と交わるという話があります。
この絵はそのストーリーの一部を切り取ったものです。
ヘンドリック・ホルツィウスは、逃げ延びた洞窟の中での様子を描いています。
ルネサンス期以降、絵画にエロティシズムが取り入れられたことで、脱出後の様子にフォーカスされた絵が盛んに描かれるようになります。
ホルツィウスはこの構図が好きなのか似た構図の絵を同じ時期に描いています。
18、19世紀になるとロマン主義が台頭しはじめ、物語の内容よりも壮絶さを物語る絵も盛んに描かれるようになっていくようになりました。
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