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【論文】ドラム演奏で脳活性!…でもただやるだけでは効果薄し【要約】

科学

楽器の演奏が子供から大人までの脳機能発達や、高齢者における認知症予防に効果的なことは科学的にも解明されてきました。

  

ドラムで脳を活性化

  

今回はドラムを使った脳機能の研究から面白いことが分かってきたので、それについての研究をまとめました。

  

初めに結論からお伝えします。

  

【結論】

・脳の発達や認知症予防に効果あり(幼児~高齢者まで年齢関係なく)

・効果的な具体例▶ワーキングメモリ、高次認知機能、空間把握、触覚、運動命令、聴覚処理など

・ただし、ただやるだけでは脳機能発達や認知症予防に対する効果なし(薄い)

・常にチャレンジしたり、考えたりしながら取り組むことがポイント

  

  

以下根拠となった研究と考察です。

※修士論文も参考にしている部分があります。研究の統計については不確かな部分もありますが、過去の研究の根拠に基づいた内容と判断し参考にしています。

参考)

音楽の認知と情動の脳内機構2018年

認知症予防の有効な知的機能刺激となるための電子楽器演奏2015年

NIRSを用いた基礎的なドラム演奏の熟達に伴う 皮質活動変化の調査2013年

音楽と高齢者2006年

認知症予防のための音楽療法の基礎的検討~電子楽器を用いた合奏システムの構築~不明

 

  

【研究内容&考察】

2013年の論文に、熟達者と非熟達者の脳活動の違いを調べた研究があります。

5名の非熟練者に、3日に渡って2つの課題を遂行。

遂行中の脳の活動を計測しました。

 

  

1つ目の課題は、初心者でも簡単なフレーズを↓

手足が全て一緒に動くフレーズ

2つ目の課題は、初心者からすると難しいフレーズを↓

手足を一部バラバラに動かすフレーズ

  

個人解析の結果、課題の上達につれて脳活動の活発になる領野とそうでない領野があることが分かりました。

 

測定には、血中の局所ヘモグロビン濃度を測定する「近赤外分光法」を用いています。

  

「近赤外分光法」とは

測定する物体に近赤外線を当て、反射した光や透過した光を測定する方法です。

ものやヒトなどに対して、薬や針、電気などの刺激が無いので「非破壊」的に測定が可能です。

脳に対しても影響が少ないため、精度の高い結果を得ることができます。

  

以下の部位についてプロープを当てて測定。

  

【計測部位の役割】

・楔前部(けつぜんぶ)
→身体の空間的情報把握と処理

  

・中心後回
→身体の各部位からの体性感覚(触覚)

  

・中心前回
→一次運動野、身体に対しての命令

  

・上側頭回
→聴覚情報処理

  

・上前頭回
→高次認知機能(ここの機能低下が認知症に繋がる)

その他の役割はこちらを参考▶脳の部位
脳の部位116ヶ所の機能がまとめてあります。

  

今回のポイントは「上前頭回」。
「上前頭回」が司る「高次認知機能」が成長期における脳発達や高齢者における認知症予防に大きく関係しています。

  

上前頭回の前方には「前頭前野」が、後方には「運動前野」があり、2つが組み合わさりながら、「今どこをどう演奏していて、正しく演奏するためにはどうすればいいか」などを考えています。

  

いわゆるワーキングメモリなどもこの分野に相当します。
  

  

【測定の結果】

各部位の測定の結果は以下の通り。(赤字枠が今回ポイントの上前頭回)

  

測定の結果より、

  

1日目は、0から課題をこなす必要があるため、上前頭回の活性が見られています。

  

2日目は、考えずとも演奏できてしまったため、上前頭回の活性は見られませんでした。(慣れてしまったため)

  

3日目は、論文から察するに、精度を高めより上手く叩こうと意識したため、上前頭回の活性が見られています。

  

  

【まとめ】

認知症予防や脳発達に効果的と言われる楽器の演奏(特にドラム)においても、ルーティン化して慣れてしまうと脳機能が活性化しない(しにくい)ことが分かりました。

  

新しいことにチャレンジしたり、より高みを目指したりと良い意味でのストレスに晒すこと自体が脳に良い影響をもたらしてくれることは確実視されますね。

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