科学

愛犬がもたらす身体的・精神的メリットとデメリット(トロント大学)

科学

オーストラリアは犬を愛する国であり、家庭の約半数が犬を飼っています。

 

犬はただのペットではなく、人間の生活において大切なパートナーとしての役割を果たしています。

 

しかし、犬を飼うことは私たちの健康にどのような影響を与えるのでしょうか。

 

近年の研究によれば、犬を飼うことは身体的な健康だけでなく、メンタルヘルスにも良い効果をもたらすことが示されています。

 

犬を飼うことによるリスクや課題もある一方で、愛犬との生活が私たちに与える恩恵を探ることで、より豊かな生活を築くためのヒントが得られるかもしれません。

 

今回の記事では、犬との共生がもたらす健康面でのメリットとデメリットを詳しく見ていきます。

 

参考記事)

Owning a Dog Can Affect Your Health in a Variety of Ways(2024/10/07)

参考研究)

Dog Ownership and Survival: A Systematic Review and Meta-Analysis(2019/10/08)

 

 

犬を飼うことによる身体的健康への利点

 

犬を飼うことは、長期的には死亡リスクの低下と関連しています。

 

2019年には、70年以上、約400万人の医療情報からなる研究分析が行われ、犬を飼っている人たちは、犬を飼っていない人々に比べてあらゆる原因による死亡リスクが24%低いことを発見しました。

 

犬を飼うことは、身体活動の増加にも関連しており、これが血圧を下げ、脳卒中や心疾患のリスクを減少させます。

 

このレビューは、心臓に関連する既往歴(心臓発作など)がある人が犬と生活することで、その後の死亡リスクが35%減少することを示しました。

 

最近のイギリスの研究では、犬を飼っている成人の人は、そうでない人の4倍近くも日常の身体活動の目標を達成していることがわかりました。

 

犬を飼っている家庭の子どもたちも、犬を飼っていない家庭の子供たちに比べて、より活動的で非構造的な遊びを楽しむことが多いこともわかっています。

 

また、外から持ち込まれる微生物によって免疫システムを強化され、犬と共に育つ子どもたちの抗生物質の使用を減少させる傾向も見られました。

 

 

健康へのリスク

しかし、犬は私たちの身体的健康にリスクをもたらすこともあります。

 

そのひとつはアレルギーです。

 

犬の唾液、尿、皮膚の鱗屑(彼らが脱落させる皮膚細胞)はアレルギー反応を引き起こす可能性があり、目のかゆみ、鼻水、呼吸困難など、さまざまな症状を引き起こすことがあります。

 

約200万人の子どもを含んだメタ分析では、早くから犬に接触することで喘息を発症するリスクを増加させる可能性があることが示唆されました(ただし、猫を飼う場合よりもリスクは低い)。

  

また、犬を飼うことで、噛まれたり引っかかれたりすることがあり、これが感染のリスクを引き起こす可能性があります。

 

また、リングワームや下痢を引き起こす病気であるカンピロバクターなど、zoonotic(動物から人に感染する)な病気を家庭内で引き起こす可能性もあります。

  

一緒に寝る場合、アレルギーやリングワームにかかるリスクが高まります。

 

また、犬が夜に動き回るため、睡眠を妨げる可能性があります。

 

しかし、一部の飼い主は、犬と一緒に寝ることでより安心感を感じており、睡眠の妨げやノミに噛まれる可能性よりも、感情的な利益が上回ると報告しています。

  

愛犬と適切に付き合っていくために、獣医による指導や衛生管理は不可欠だと言えます。

 
  

メンタルへの影響

多くの人々にとって、犬を飼うことの利点が身体的なものだけではないでしょう。

 

仲間として、家族として犬は感情的にもよい存在と言えます。

 

彼らの存在は、不安、うつ病、心的外傷後ストレス症候群の症状を軽減するのに役立ち、メンタルヘルスの問題に直面している個人にとっても有益な存在です。

 

ドッグパークや近所では、犬をきっかけとしたコミュニケーションもあり、人と会話をすることや新しい友達を作ることができます。

 

これらの社会的相互作用は、コミュニティへの帰属意識を高め、社会的孤立感を減少させるのに役立ちます。

 

ただし、病的に気分の落ち込みが続いたりと慢性的な孤独を感じている場合、散歩中に他の人と交流するのが難しいかもしれません。

 

オーストラリアの研究では、単に犬を飼うことだけでも孤独感の減少と関連していることがわかりました。

 

人々は気分が改善されたと報告していますが、これは犬を通して絆を強くすることの利点かもしれません。

 

犬を世話するつもりが、自分の心がお世話になっているのかもしれませんね。

 

   

犬を飼うことのデメリット

 

犬は喜びの共有や運動習慣の構築など、数多くの健康上の利点をもたらしますが、欠点や課題もあります。

 

特に行動問題や健康上の問題を抱える犬を世話する場合、責任によるプレッシャや財政的なストレスを引き起こす可能性があります。

 

犬は人間よりも寿命が短いです。

 

愛する仲間を失うことは、うつ病を引き起こしたり、既存のメンタルヘルスの問題を悪化させたりすることに繋がります。

 

ライフスタイルの適合性や住居条件も、犬を飼うことが適しているかどうかに大きな役割を果たします。

 

ペット効果」と呼ばれる現象は、ペット、特に犬があらゆる状況や人々の身体的および精神的健康を改善することを示唆しています。

 

しかし、事はそう単純ではありません。

 

時には、ペットを飼うことが有益であるよりもストレスになるかもしれません。

  

大切なのは、家族として過ごす動物たちは、人間の健康の「道具」ではないということです。

 

飼い主と犬が良い関係を築くには、両者の幸福が維持されることが条件となり、ペットを迎える際には最後まで面倒を見るという責任の重さも天秤に翔必要があります。

 

愛玩動物という言葉に悪意や善意という概念があるかは分かりませんが、それを善とするのも悪とするのも、飼い主の心遣い次第となっていくことを忘れてはなりません。

 

 

まとめ

・身体的健康への影響: 犬を飼うことは、長期的に死亡リスクの低下や身体活動の増加と関連しており、心臓病や脳卒中のリスクを減少させる効果がある

・犬を飼うことで、子どもたちの免疫力が強化され、活動的な生活が促進される

・犬は感情的サポートを提供し、不安やうつ病の症状を軽減する助けになる

・一方で、犬はアレルギーや感染症のリスクを伴うことがあり、飼い主にとっての経済的・精神的な負担も存在する

・犬を飼うことがすべての人にとって有益であるわけではなく、個々の状況に応じた配慮が必要である

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