科学

【研究】健康的なライフスタイルは、遺伝的な早期死亡リスクを62%軽減できる(浙江大学、エディンバラ大学、他)

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私達の祖先が食べてきた食事が私たちの遺伝子に影響し、健康にまで関連していることは、最近の研究で少しずつ明らかになってきました。

 

つまり、昔から小麦を食べていた民族は小麦の消化に優れた遺伝子や内臓の働きがあり、米を食べてきた民族はそういった食べ物の消化に優れているということです。

 

このことは、健康を科学する上で非常に重要で、欧米人にとって〇〇の成分が健康に有益だからといって、日本人にそれが当てはまる訳ではないということを表しています。

 

しかし、多くの研究によって明らかになっているのは、定期的な運動を行い、高等質、高脂質の食事を避けることが、健康寿命にとって明らかに有益な効果があるということです。

 

では、そういったライフスタイルを行なうことで、遺伝的なリスクはどれぐらい軽減されるのでしょう。

 

今回は、そんなライフスタイルと遺伝リスクという二つの要因を共に調べた、数少ない研究についてがテーマです。

 

参考記事)

A Healthy Lifestyle Could Offset Genetic Risk For Early Death by a Hopeful 62%(2024/05/05)

 

参考研究)

Genetic predisposition, modifiable lifestyles, and their joint effects on human lifespan: evidence from multiple cohort studies

 

 

健康的なライフスタイルと早期死亡リスクの軽減

 

浙江大学、エディンバラ大学による英国の35万人以上を対象とした研究では、健康的なライフスタイルは、若くして死亡する遺伝的リスクを最大62%軽減できる可能性があることを発表しています。

 

研究者らは「私たちの知る限り、この研究は、ライフスタイルと遺伝的リスク、そして人間の寿命との関連性を調査した最初のものである」と発表した論文にて述べています。

 

これまでの疫学研究では、ライフスタイルか遺伝的リスクのどちらか一方を対象としていました。

 

本研究で行なわれた、遺伝学、環境、病気の関連性を調査した大規模で長期的な集団研究のデータを用いだ分析によって、遺伝的リスクとライフスタイル要因が長寿に及ぼす影響を同時に比較できるだろうと考えられています。 

 

研究によるデータの対象となったおよそ35万人は、2006年から2010年にかけて英国バイオバンク研究に登録されたヨーロッパ系の成人であり、彼らはおよそ13年間(中央値)の追跡調査が行われました。

 

対象者は、食事、身体活動、喫煙、アルコール摂取量、体型、睡眠時間について質問され、回答に基づいてグループ化されました。

 

研究者らはまた、米国の研究から導き出された、寿命に影響を与える多遺伝子リスクスコアと呼ばれる既知の遺伝的リスク因子に基づき、参加者を3つのカテゴリーに分類しました。

 

以前にも行われた調査と同様に、研究者らは遺伝だけの要因で見ると、早期死亡のリスクが21%上昇する可能性があることを発見しました。

 

また、睡眠不足、運動不足、加工食品、タバコ、アルコールなどの不健康なライフスタイルは、遺伝的素因に関係なく、早期死亡リスクの増加(78%増)と関連していることが分かりました。

 

それに対し、禁煙、禁酒、定期的な運動、食事、十分な睡眠など、より健康的なライフスタイルを選択することで、寿命が短くなる遺伝的リスクが62%相殺されることも発見しました。

 

研究者らは、「この研究は、健康的なライフスタイルを送ることは、遺伝的要因による寿命短縮の影響を軽減することに役立つだろう」と結論づけています

 

ただし、これは観察研究であるため、因果関係について明確な結論を導くことはできません。

 

参加者のほとんどはヨーロッパ系白人を祖先としていたため、この結果を他の集団に一般化することもできません。

 

さらに、参加者は研究に参加した一時点のみでライフスタイルについてのみ調査されていることにも注意が必要です。

 

研究された遺伝的リスクの増加や軽減の変化はごく一部しか捉えていないため、より多くのDNAが存在し、それぞれが複雑に絡み合って関係している可能性があります。

 

そして、この研究におけるもうひとつの大きな問題は、何歳からライフスタイルを変えるとどれくらい寿命(余命)が変わるのかということです。

 

本研究の分析の結果からは、寿命が短くなる遺伝的リスクが高い人であっても、40歳時点で健康的なライフスタイルに変えることで、平均余命が約5年延びる可能性があることが判明しています。

  

一定のライフスタイルが形成される前に寿命を延ばすためには、証拠に基づいた効果的な公衆衛生介入を受けることが非常に重要である」と研究者らは述べています。

 

この研究の詳細は、BMJ Evidence-Based Medicineにて確認することができます。

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