科学

【研究】腸内細菌の酵素によって血液型を変えることができるかもしれない(デンマーク工科大学、他)

科学

日本において血液型と聞くと、性格判断や運勢占いなどでよく知られているものかと思います。

  

A型は几帳面、B型は自己中、O型は大雑把、AB型は天才肌といった認識が広まり、根拠はありませんが、「なんとなくそうかもなぁ」と思ってしまう不思議な概念です。

  

本当に血液型と性格に関連性があるのかはさておき、幼い頃から「あなたはA型だから几帳面だね」なんて言われて育つと、本当にそうなってしまうものです。

  

医療の世界では、輸血をする際にはこの血液型は非常に重要で、型の合っていない血液同士を輸血すると血球の凝集や細胞への攻撃などが起こり、最悪の場合死に至ります。

 

日本赤十字社 【献血まるわかり辞典】vol.5「万能血」より

 

そんな血液型の中でもO型は、A・B・AB型の人が持っている抗体が反応しないため(例外あり)、多くの輸血に対応することが可能です。

  

その柔軟な性質から、しばしばO型の血液不足に悩まされることもあります。

  

もし、他の血液型をO型に換えることができるなら、こういった問題の解決に大きく貢献できそうです。

  

今回はそんな血液型の変換に関する研究についてがテーマです。

  

以下にまとめていきます。

  

参考研究)

Enzymes Discovered in Gut Bacteria Can Change a Donor’s Blood Groups(2024/04/30)

  

参考記事)

Akkermansia muciniphila exoglycosidases target extended blood group antigens to generate ABO-universal blood(2024/04/29)

 

  

腸内細菌の酵素と血液型の変換

  

デンマーク工科大学をはじめとするデンマークとスウェーデンの研究者らは、「ある腸内細菌が作る酵素によって、“極めて高い効率”で赤血球の性質を一般的なO型に変換することができた」と主張しています。

  

血液型をO型に変換することは特別新しいアイデアではありません。

  

根本的な技術は1982 年に開発され、当時の研究者らはコーヒー豆から抽出された酵素によって、B型の細胞の表面糖を除去し、別の血液型に変える方法を編み出していました。

  

しかし、その酵素反応は非常に非効率的であり、大規模な使用は非現実的とされました。

  

また、臨床試験での初期の期待にもかかわらず、安全への懸念が生じたことから研究が大きく進歩することはありませんでした。

  

詳しい理由は不明ですが、ドナー細胞からほぼすべての抗原が除去されているにもかかわらず、ドナーの血液と適合しない場合があったとされています。

  

そこで科学者たちはこの分野の研究を再スタートさせ、2019年には腸内細菌から特別な酵素を発見することができました。

  

2022年の時点では、よく知られているAOB型をさらに細分化することで、40 以上の血液型のシステムが存在することがわかっています。

  

A型とB型の中でも、赤血球の膜から突き出ている分子の長さや密度が異なるサブタイプが存在したりと、血液型は3〜4種類という単純なものではありませんでした。

 

デンマーク工科大学の2人の生物工学者、マティアス・ジェンセン氏とリン・ステンフェルト氏らは「我々は、A抗原とB抗原だけでなく、分子の長さに対しても効率的な変化を与える酵素を発見した」と研究にて報告しています。

  

他のチームによる研究に基づいて、研究者らは腸内細菌のひとつであるアッカーマンシア・ムシニフィラによって作られる酵素から、複数のドナーおよびさまざまなAおよびBサブタイプの赤血球を処理しました。

  

処理の際、臨床使用の可能性を考慮し、赤血球の濃度や室温などの条件や時間的制約(30分)を厳しくした状態で行いました。

  

その結果、選択された酵素によって、標準的なA抗原およびB抗原に加えて、特殊なグループAおよびB抗原の4つの既知の拡張部分すべてを赤血球から除去されました。

 

処理したB型の細胞と血漿サンプルとの不適合率は 9%未満に減少し、反応が起こった場合の重篤度も軽減されました。

  

しかし、赤血球のごく一部は依然としてO型血漿に対して不適合な反応をするため、今以上にA型血球の変換を改善するには、さらなる研究が必要です。

  

これらを受け研究者らは、「より多様なA抗原とB抗原を除去する酵素を発見することで、輸血用の万能血液や移植用の臓器の選択の可能性を広げることができるかもしれない」と今後の研究に期待を寄せています。

  

2022年、研究者らは既に同様のプロセスを用い、実験室条件下で特殊なグループAの血液型を汎用的なO型に変換しています。

  

研究室で培養された赤血球は、献血された血液よりも長く持続するかどうかをテストするための人体実験も行われています。

  

これらが成功すれば、血液の供給量が増え、繰り返しの輸血を必要とする患者らが合併症を回避するのにも役立つ可能性があるとしています。

  

この研究は、Nature Microbiologyにて確認することができます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました