前回、寄生虫が動物の脳をコントロールし、進化の過程で相互に関係していることに関する研究をまとめました。
今回も動物をコントロールするある菌についてのお話しです。
ある菌に感染したハエは、死の数時間前から特定の行動をとるようになります。
長年そのメカニズムは謎でしたが、それを解明する大きな手がかりなるかもしれません。
参考記事)
・Mind-Controlling Fungus Forces Zombie Flies Into A Death Climb(2023/06/13)
・This Horrifying Zombie Fungus Forces Males to Mate With The Dead. Now We Know How(2022/07/24)
参考研究)
・Neural mechanisms of parasite-induced summiting behavior in ‘zombie’ Drosophila(2023/05/15)
ゾンビバエの行動制御をする菌
アメリカ、ハーバード大学の研究者はハエカビ(Entomophthora muscae)に感染したミバエは、カビ菌によって脳の体内時計やホルモン生成システムをコントロールし宿主を高い場所に移動させるような行動を取らせることを発見しました。
感染したミバエは、地上から遠く離れた場所で口吻から粘着性の液を出し、自らを受けなくした後、翅を大きく上にあげながら真菌を空中に放出させます。
このゾンビバエの行動は過去167年も前から化学者たちに注目されてきましたが、その行動を引き起こすメカニズムはほとんど謎でした。
研究の筆頭著者キャロライン・エリヤ氏は、ゾンビバエの特殊な行動は、死の2時間半ほど前から現れることが明らかにしました。
機械学習を通して、ゾンビバエを特定しすることで行動をより正確に監視するようにしました。
監視の結果、真菌の細胞がサーカディアンシステムと神経分泌システムをコントロールし、特定のホルモンを放出させていることが分かりました。
死の2時間半前から高い場所へ移動するのは、ホルモン異常によってハエの運動活動が活発的になったことによるものと考えられます。
逆にコントロールされているホルモンの分泌を抑制すると、ゾンビバエが上に上がることをやめてしまうことも分かりました。
また、感染によって血液脳関門の透過性が高まることも分かりました。
血液中の異物を脳に通さないためのシステムですが、そのシステムも感染によって管理されてしまうようです。
これによって血液中の物質が脳に直接影響を与えるようになることが分かりました。
感染したハエとそうでないハエの間では、やはり血液中の特定の化合物の濃度に違いがあることが発見されました。
このことは、血液中の物質が流行の行動に何らかの関係を持っていることを示しています。
感染バエの血液を通常のハエに輸血するだけで、通常のハエもより高い場所を目がけて飛ぼうとすることが分かりました。
ハエカビの感染は、感染性の胞子がハエに付着することで始まります。
酵素を使ってクチクラを破り、内側からハエを食べます。
この恐怖の感染菌のいくつかの疑問は解決しましたが、なぜ2時間半前から流行の行動をコントロールするのか、どの化学物質が関与しているかなどといった要素を明らかにするには、さらなる研究が必要だと、研究者を述べています。
前回の寄生虫の記事でもお話ししましたが、こういった菌も生物の進化と関係しているのかもしれませんね。
幸いなのは、この感染が人間では起こっていないことです。
死ぬ前に特定ような行動をとるようにコントロールされてしまうのは、死に方を選べないようで、なんとも悲しいものですね。
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