心理学

【ことばの心理術⑥】部下に対する命令の仕方

心理学

【前回記事】

 

「ひと言」で相手の心をつかむ ことばの心理術 フレーズ辞典

      

この記事では、著書「ひと言」で相手の心をつかむ ことばの心理術 フレーズ辞典から、日常で使える言葉の心理をまとめていきます。

     

主に心理学で使われる用語やその使い方に焦点を当て、ためになったと思ったものを優先的にピックアップしていきます。

     

前回と前々回は、会社の上司に対しての対応の仕方を中心にまとめてきました。

 

今回は、組織の部下に対してどのような伝え方をしたら効果的かについてまとめていきます。

  

 

カリギュラ効果

映画「カリギュラ」のワンシーン より

観光地や建物の中に「立ち入り禁止」の看板があると、その向こうがどうなっているのか気になったりしませんか?

 

実際にその場に足を踏み入れたりしたことがあるという人もいるかもしれません。

 

これは“カリギュラ効果”と呼ばれるもので、禁止されていることをついやってみたくなってしまうことを言います。

 

1980年イタリア、アメリカの合作映画「カリギュラ」は過激なポルノ描写があることが問題になり、ある地域では上映禁止になりました。

 

しかし、この視聴制限が却って評判になってしまうという事態に。

 

このように禁止されると余計頭に残ってしまうという例を、この映画から文字ってカリギュラ効果と呼ばれるようになりました。

 

本書では、このカリキュラ効果の例として優秀な野球コーチの話をしています

 

優秀な野球のコーチは試合の時、バッターに対して「外角低めには手を出すな」という指示は絶対しません。

 

外角低め”という言葉が頭に残ってしまい、実際にそこに球が来たら選手はついバットを出してしまうからです。

 

強く禁止されることによって、かえってそれを意識してしまう心理がどうしても人間には働きます。

 

だから、人をある方向に動かしたい時には「○○をするな」ではなく「○○をしよう」と、何かをすすめたいことを言葉にする方がいいのです。

 

バッターのコーチの例で言うと、「外角低めに手を出すな」ではなく、「内角高めを狙うんだ」と指示をする感じですね。

 

本書でも、会社で部下に指示を出す時には、「こういったプレゼンはするな」ではなく、「このようにプレゼンしよう」と伝えた方がうまくいくと述べられています。

 

 

拮抗条件付け

社内で部下や同僚の来客対応が非常に悪かったとします。

 

これを改善するためには、どういう言い方が良いのでしょうか。

 

やはりミスをしてしまったらすぐ「その対応はダメだ!」と相手の行動を直接否定することが効果的でしょうか。

 

これでは本人の自信を失わせ、電話を取ることが嫌になってしまうことでしょう。

 

よほど向上心がある人でなければ、「じゃあ、あなたがやってくださいよ。」と心の中で思われるに違いありません。

 

ここで効果的と思われる対応の仕方は、「感じの良い、クレーム対応のマニュアルがあるから、今度やってみるか。」と提案することです。

 

対応の悪さを叱るのではなく、別の対応の仕方があるかもとポジティブな行動を推奨するのです。

 

このように行動を促すことを、心理学の用語で“拮抗条件付け”と言います。

 

問題となる行動と両立しないような別の行動を選んで推奨していけば、結果的に行動を減らすことができるという行動療法のテクニックです。

 

子どもの勉強への対応でも同じようなことが言えます。

 

テストの結果が悪く落ち込んでいる子に対して「なんでこんな点数なんだ。いったい、どんな勉強の仕方をしているんだ。」と頭ごなしに叱っては、自分が否定されたことにショックを受けるだけで勉強に対するやる気は起きません。

 

「学校で習ったところのどこでつまずいてるか探してみよう。」

 

「○○と△△ができるようになったら点数も上がるだろうね。」

 

と過ぎ去ったことを掘り返して叱るのではなく、これからどうしたらいいか、ポジティブな提案をするのです。

 

相手がポジティブな行動へ導けば、自然に良い結果が出てくる。

 

それがきっかけで自らポジティブな行動をしたいという気持ちが高まり、やる気に繋がっていくのです。

 

 

コマンド(命令)とデコマンド(お願い)

良い人間関係を築くには、自分から近づいていくことが大切です。

 

これは上司と部下という上下がハッキリした関係でも同じです。

 

例えば上司が部下に書類のコピーを頼む場合、以下のような4つのパターンが考えられます。

 

①「ちょっと君」と、自分のデスクまで呼んで「これ、コピー取って」

 

②「ちょっと○○くん」と、自分のデスクまで呼んで「この書類のコピーを取ってくれないか?」

 

③相手のデスクまで行って「○○さん。すまないけど、この書類のコピーを取ってくれないか。」

 

④相手のデスクまで行って、「○○さん。多忙なところまことにすみませんけど、この書類のコピーを取って頂けませんでしょうか?」

 

①は高圧的で、④になるにつれてへりくだった言い方になっていますね。

 

【①と②の頼み方】

①はあからさまな命令口調であり、②も上から目線です。

 

上司だからとはいえ、あまりにも露骨な相手を見下した言い方に聞こえます。

 

これでは部下も言うことを聞いてくれるかもしれませんが、いい気持ちはしないでしょう。

 

コピーはぞんざいになるかもしれませんし、ページが抜けていても教えてくれないかもしれません。

 

このご時世、場合によってはパワハラとさえ言われかねません。

 

人には自尊心が備わっているため、強い命令口調には反発心が生まれます。

 

【③の頼み方】

そういう視点で見ると③の頼み方は適切だと考えられます。

 

相手は気遣いながら柔らかい言い方で頼みごとをしているので、相手も快く引き受けてくれることが多いでしょう。

 

もし相手が本当に忙しそうであれば、「○○時までによろしく」と時間に余裕があることを伝えて、相手の裁量にまかせることもかなり効果的です。

 

【④の頼み方】

では最も命令口調ではない④はどうでしょう。

 

あまりに丁寧すぎて、上下関係さえないような言い方です。

 

この人が上司で本当に大丈夫だろうかと、かえって嫌がれることも考えられます。

  

人はコマンド(命令)に対しては心を閉ざし、時には反発します。

 

同じ内容でも、デコマンド(お願い)の形で伝えるとすんなりと受け入れられるものです。

 

ちょっとした言い方の違いで人間関係は良くなるという例ですね。

 

 

まとめ

・禁止することではなく推奨することを伝え、カリキュラ効果を防ぐ

・拮抗条件付けによってポジティブな提案をする

コマンド(命令)ではなくデコマンド(お願い)で受け入れてもらう

 

円滑にコミュニケーションを図るには、自分から動く必要があるという点がポイントとなることが分かります。

 

相手の行動が変わるのを待っているのは、ただの時間のロスにもなるので、自分から変わるのがもっとも手っ取り早く、結果的に自分が楽になるという例でもあります。

 

少し前の時代であれば、年功序列的な威厳が、部下に伝わって命令もすんなり受け入れられていたことでしょう。

 

今は、能力に応じて相手を判断するという意識も芽生えているため、上の立場であっても襟を正して行動しなければいけない時代なのかもしれません。

 

足元をすくわれないように、自分も意識しなければならないですね。

 

以上、部下に対する命令の仕方でした!

 

 【次回記事】

 

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