イタリア人の詩人であるダンテ・アリギエリ。
24歳でこの世を去ったベアトリーチェのために書いたとされる“神曲”は、後の文学や言語学に大きな影響を与えました。
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当時、知識人が手にする書物といえば共通語であるラテン語で書かれることがほとんどでした。
書物の多くは勉学に余裕のある裕福層にために書かれていると言っても過言ではなく、一般人には馴染み深いものではありませんでした。
一方この神曲は、当時その地域で話されていたトスカーナ(イタリア中部)方言を使って書かれていたため、多くの人がその内容を把握するものとなりました。
その影響はとても強く、神曲が標準イタリア語の基礎となったとされています。
“神曲”については以下の記事へ!
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ドラクロワのデビュー作
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ドラクロワはこの神曲に登場するワンシーンを描き、1822年のサロンにて出品しました。
描いたシーンは3部構成のうちの第一部である地獄編の第8歌です。
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このシーンは主人公ダンテが、現世と地獄を分けるアケローン川(三途の河のようなもの)を小舟で渡っているというものです。
この作品がドラクロワが世に送り出した事実上のデビュー作となります。
サロン出品時には当時主流であった新古典主義派の人物から激しい非難がありましたが、ロマン派のアントワーヌ=ジャン・グロは好評だったそうで、後に国家買い上げになります。
では作品を見ていきましょう!
ダンテの小舟
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赤い頭巾を被った男性が神曲の主人公“ダンテ”です。
頭に月桂樹を載せ、茶色のローブを羽織るのは案内人であるウェルギリウスです。
舟の漕ぎ手のカロンによってアケローン川を渡っています。
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周りには現世と地獄を彷徨う死者が溢れ、川での苦痛から逃れるかのように力強く舟にしがみつこうとしています。
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そんな状況に慌てるダンテとそれをなだめるウェルギリウス。
これから待ち受ける文字通り地獄の光景を目の当たりにする彼は、このとき何を思っているのでしょうか。
この物語の終着点は天国。
愛するベアトリーチェと出会うまでの道のりには、数々の罪や苦難が待ち受けていることを示唆する一枚絵でもあります。
遠くに雷鳴が響く中、荒ぶる亡者の海を小舟で渡る姿は、見る人をハラハラさせてくれます。
それまでこのような神話的な絵は、聖書などの古典的な題材をモチーフにするものが主流でした。
そんな中でドラクロワは、サロンでも敢えて自分の流儀を貫き通し、生にしがみつく生々しい表現を世に知らしめたのですね。
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