哲学経済

資本とは増える貨幣である~資本論④~

哲学

(↑前回記事)

    

前回の記事では金属が貨幣になった理由をまとめていきました。

  

量や重さが表しやすく、分割と合体が簡単で、大きさによって質が変わらないという特性が、ものの価値を計るのにぴったりだったのですね。

  

また貨幣には価値を表す機能価格を表す機能があり、その二つは別々であったことも伝えました。

  

今回はお金が持つ取引での役割と貨幣と資本の違いについてまとめていきます。

 

  

貨幣という汗

商品の流通では貨幣と商品の交換がついてまわります。

  

例えば…。

米10kg

“金1g”

服一着

“金1g”

布1kg

“金1g”

  

マルクスは商品が別の商品になるまでの間に現れる貨幣として表現しました。

  

貨幣は常に商品と商品の間を行き来していることになります。

  

千円札と百円玉

 

しかし実際こんなに上手くいくことはなく、市場に出ている商品が全て売れるわけではありません。

  

商品が売れなければ価格は下がり、売れすぎると価格は上がる…。

  

代謝が上手くいかないことで病気になるように、彼はこの現象がいき過ぎると恐慌に繋がるとも指摘しています。

  

 

流通の外に出た貨幣

この項では恐慌の引き金になる“デフレ”の危険に触れていきます。

  

絶えず商品を繋いでいる貨幣ですが、流通の外に出た貨幣は一体どうなるでしょう。

 

貨幣はいついかなる時でも商品と交換できるものです。

  

であればすぐに商品と交換しなくても良いと考えるのが普通です。

  

必要なものが出てくるまで溜め込んでおいた方が、いざというときに使い勝手が良いでしょう。

  

マルクスは流通の外に出た貨幣は、蓄蔵貨幣になるといいます。

  

貯金箱

  

この蓄蔵貨幣は使う側としては便利な存在ですが、経済にとっては問題になります。

  

貨幣を溜め込むということは、経済の流れを止めるということです。

  

市場に流れる貨幣の量が減ると、相対的に商品が多く余ることになります。

 

商品が多く余るということは、商品が売れにくくなるということになります。

  

商品が売れにくくなると価格は下がり、デフレの発生に繋がってしまうとマルクスは主張しました。

  

 

貨幣と資本の違い

あらゆる資本のもとは突き詰めれば貨幣です。

  

貨幣はある性質をもつことで資本になります。

 

その性質とは、“増える”ということです。

  

マルクスは“資本とは増える貨幣である”と言っています。

  

これを理解するためには、最初の項で紹介した商品と貨幣の流通過程を見る必要があります。

  

彼はドイツ語由来の二つの言葉

・W(商品=Ware)

・G(貨幣=Geld)

を使って説明しています。

  

商品の流通においては、商品の売りがスタートになります。

  

つまりW→Gというわけですね。

  

市場では W→G→W→G→W→…と無限に繰り返されていきます。

  

マルクスはこの流通の流れを“ W→G→W”で区切った場合と“G→W→G”で区切った場合では性質が違うと言っています。

 

・W→G→Wの場合

これはお米の生産者がお米を貨幣に変え、その貨幣を使って別の商品を買うという流れです。

  

生産者は最後に何かを買うためにものを売ります。

  

貨幣はお米と別の商品を繋ぐ媒介として機能しています。

  

これが貨幣本来の役割でしたね。

  

・G→W→Gの場合

これは貨幣で商品を買い、買った商品を貨幣に変えるというものです。

  

買った商品が同じ値段で売れても仕方がないので、この場合は貨幣Gの増加が目的になります。

  

具体的に言うと1,000円で服を買い、1,200円で売るという行為がそれに当たりますね。

  

この時に増えた200円を“剰余価値”と言います。

  

繰り返される流通においては必ず、このG→W→Gに気付き利用する者が現れるのです。

  

  

安く買って高く売りたいのが人間

本来商品どうしのやりとりは等価交換だったはずです。

  

もちろん“貨幣”も存在が特殊なだけで商品のひとつです。

  

1,000円と1,200円を交換してくれる人がいるワケはありませんが、1,000円分の価値を持った商品が1,200円になることはあります。

  

この矛盾についてマルクスは、フランスの哲学者コンディヤックの考えを使って説明しています。

  

エティエンヌ・ボノ・ドゥ・コンディヤック
エティエンヌ・ボノ・ドゥ・コンディヤック(1714〜1780年)

  

コンディヤックはこう言いました。

 <strong>コンディヤック</strong>
コンディヤック

価値はニーズによって変わる。

“ニーズが拡大すれば必要性も上がり、ニーズが縮小すれば必要性も下がる。ニーズによって希少性が変わり、物の価値も変動する。”

と主張しました。

  

人は不要なものを必要なものと交換しようとするため、必ず利益を求めるようになると言うのです。

  

このことからマルクスは、安く買って高く売るというのが人間の本質だと考えました。

  

ただし利益を求めて高く売り続けているだけでは、最終的に買い手はつかなくなっていきます。

  

商品と貨幣の間ではどれだけぼったくろうとしても、ぼったくり続けることはできないよう、不思議とバランスがとられているのです。

 

彼は“本来であれば流通の中で資本は生まれない”と言います。

  

しかし実際にG→W→G+剰余価値ということは起こっています。

  

一体どこから剰余価値が生まれてくるのか…。

  

それはまた次回の記事にて!

  

  

まとめ

・貨幣は商品と商品の間を行き来し価格を表す

・流通の外にでた貨幣は蓄蔵される

・市場から貨幣が出ていくことがデフレに繋がり恐慌の恐れが出てくる

・貨幣の増加を目的とするG→W→Gの流通には剰余価値が発生する

・剰余価値が上乗せされた貨幣が資本になる

・流通の中では剰余価値は発生しないようにバランスがとられている

・ではどこから剰余価値が生まれるのか…→次回の記事へ

  

ちょっとまとめが長くなってしまいましたね。

  

それだけ資本論の重要な要素があったということの裏返しです。

  

最後に残してしまった疑問である剰余価値の出どころ…。

  

ここからの主役は資本家と労働者です。

  

いよいよマルクスの資本論の根幹に迫っていきます。

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