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読書は社会全体の進化を支える 〜読書が脳に与える影響〜

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読書が人間の脳に与える影響は、単なる趣味の範囲を超え、脳の構造や機能に深い影響を及ぼします。

 

全国学校図書館協議会が毎年5月に行なっている調査では、1994年と比べると2024年では増加傾向にあることが示されています。

 

全国学校図書館協議会 より

 

その一方、海外では読書を楽しむ人の数が減少していることが問題となっており、この現象が私たちの脳や進化にどのような影響を与えるのかが注目されています。

 

今回のテーマは読書と脳の関係についてです。

 

読書の習慣が脳にどのような影響を与えるのか、最新の研究結果を基に詳しく見ていきます。

 

参考記事)

The British Reader is in Decline as The Reading Agency Reveals Half of UK Adults Don’t Read Regularly(2024/07/23)

 

参考研究)

Heschl’s gyrus and the temporal pole: The cortical lateralization of language(2024/12/01)

 

 

読書習慣の変化とその背景

近年イギリスでは、テクノロジーの進化やエンターテインメントの多様化により、読書離れが加速しています。

 

英国の成人の約50%が「定期的に読書をしない」と回答しており、この数字は2015年の42%から増加しました。

 

また、16歳から24歳の若者の4人に1人が「これまで読書を楽しんだことがない」と答えています。

 

このような変化の背景には、スマートフォンやタブレットの普及、動画やSNSの人気の高まりが関係していると考えられています。

 

しかし、読書離れは単なる趣味の喪失にとどまらず、脳の発達や認知能力に影響を及ぼす可能性があります。この問題を明らかにするため、最新の研究が行われました。

 

 

読書能力と脳の構造の関係

最新の研究では、1000人以上の参加者のデータを分析し、読書能力と脳構造の関係を調査しました。

 

その結果、読書能力の高い人々には特定の脳構造の特徴が見られることが判明しました。

 

特に注目されたのは、言語処理に重要な左脳の2つの領域です。

 

【左側頭極の役割】

左大脳半球の外側面(オレンジ色の部分が側頭極)

 

左側頭極(左側頭葉の前部)は、異なる情報を関連付けて分類する役割を持っています。

 

この領域は、視覚情報、感覚情報、運動情報を統合して、単語の意味を構築するプロセスに関与します。

 

たとえば、「」という単語の意味を理解する際、この領域は足の見た目、感触、動きに関連する情報を統合します。

 

 

【ヘッシェル回(一次聴覚野)】

緑の部分が一次聴覚野

 

ヘッシェル回(Heschl’s gyrus)は、聴覚皮質が位置する領域であり、読書能力の高さと関連していることがわかっています。

 

読書は視覚だけでなく、音声認識も必要とするスキルです。

 

文字を音声に結びつけるためには、まず言語の音に対する認識が求められます。

 

この音韻認識は、子どもが読書能力を発達させる際に重要な要素です。

 

左ヘッシェル回の厚みは読書能力の高さと関連し、薄い場合にはディスレクシア(読字障害)との関連が指摘されています。

 

 

脳の柔軟性と読書の重要性

脳は「可塑性」を持ち、新しいスキルを学ぶことで構造が変化します。

 

たとえば、語学を集中的に学んだ若者は、言語領域の皮質の厚みが増加することが観察されています。

 

同様に、読書も左ヘッシェル回や側頭極の構造を変化させる可能性があります。

 

 

脳の可塑性と学習

脳の可塑性とは、新しい経験や学習によって神経ネットワークが再構築される能力を指します。

 

このプロセスは、年齢を問わず起こり得るものであり、特に読書のような複雑な活動が脳の発達に大きな影響を与えることが示されています。

 

若者が集中的に語学を学んだ場合、左脳の言語領域がより厚くなることが確認されています。

  

同様に、読書を継続的に行うことは、脳の構造を健康的に維持するための重要な要素と考えられます。

 

 

読書の未来と社会的影響

 

もし読書の優先順位がさらに低下した場合、私たちの社会や進化にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

 

読書は、単に知識を得るだけでなく、他者の視点を理解し、感情移入する能力を育てます。

 

これらの能力が失われると、人間関係や社会的相互理解に深刻な影響が及ぶ可能性があります。

 

さらに、読書は創造性や問題解決能力を高める手段でもあります。

 

物語を読むことで得られる想像力は、現実の課題を新しい視点で解決する力を養います。

 

読書は個人的な楽しみであると同時に、社会全体の進化を支える重要な行為でもあるのです。

 

読書は個人の成長だけでなく、人類全体の未来にも関わる行為です。

 

毎日の生活に読書を取り入れることで、脳の健康を保ちながら、より豊かな社会を築くことができるでしょう。

 

 

まとめ

・左脳の特定の領域が読書能力に深く関与している

・読書や語学学習が脳の構造を変化させ、認知機能をはじめとする脳の健康を促進する可能性がある

・読書離れが感情移入能力や社会的理解に与える影響の重要性が指摘されている

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