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高カフェイン摂取と記憶障害のリスク低下

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2023年8月『Alzheimer’s & Dementia: The Journal of the Alzheimer’s Association』で発表された研究によると、高カフェインの摂取がアルツハイマー病や他の認知症による記憶喪失リスクの低減に関連していることが示されました。

 

この発見は、カフェインが脳の健康にどのように影響を与えるかを理解するうえで重要な一歩。

 

一方、リール大学の研究者たちは、カフェイン摂取が必ずしも認知機能の低下を防ぐと結論づけるには至っていないとしています。

 

今回のテーマはそんなカフェインとアルツハイマーに関する研究の分析についてです。

 

参考記事)

Study Finds Link Between Higher Caffeine Consumption and Lower Risk of Memory Loss(2024/10/26)

 

参考研究)

Association of caffeine consumption with cerebrospinal fluid biomarkers in mild cognitive impairment and Alzheimer’s disease: A BALTAZAR cohort study(2024/09/04)

 

 

カフェイン摂取と認知症の関係

アルツハイマー病は最も一般的な認知症の一つであり、アメリカ国内だけでも推定690万人が影響を受けています。

 

この病気に関する根本的な原因や治療法が確立されていないため、リスク要因の発見は様々な研究機関で探求され続けている課題です。

 

今回のテーマとなる研究は、2010年から2015年の間に行われたデータをもとに、軽度の認知障害(MCI)またはアルツハイマー病を持つ263名の参加者を対象としています。

 

この研究では、カフェイン摂取が認知機能の低下にどの程度関連するかを明らかにするため、対象者の日常的なカフェイン摂取量に関するデータを収集し、さまざまな臨床的、神経心理学的、生物学的評価を行いました。

 

 

研究の方法

参加者はカフェイン摂取量に関するアンケートに回答し、日々どれだけのコーヒー、紅茶、チョコレート、炭酸飲料を消費しているかを記録しました。

 

また、彼らは臨床評価や神経心理学的テストを受け、一部の参加者はMRIスキャンや脳脊髄液(CSF)のサンプル提供も行いました。

 

CSFは脳や脊髄を保護する液体であり、認知症に関連するタンパク質のレベルを測定するのに重要な役割を果たします。

 

参加者は日常的なカフェイン摂取量に基づいて、1日216mg以下の「低カフェイン摂取グループ」と、それ以上の「高カフェイン摂取グループ」に分類されました。

 

この基準は、一般的な12オンス(340g)のコーヒー1杯が約113~247mgのカフェインを含むことを基準にしたものです。

 

 

研究の結果

分析の結果、低カフェイン摂取グループの参加者は、記憶喪失のリスクが高いことが分かりました。

 

さらに、アルツハイマー病に関連する特定のアミロイドタンパク質(特にアミロイドβ42)のレベルが低い傾向があることも示されました。

 

これらのアミロイドタンパク質は、脳内に蓄積して凝集することでプラークを形成し、脳機能に悪影響を及ぼすと考えられています。

 

 

カフェインと認知症の関係性

 

この研究の結果は、カフェインの摂取がアルツハイマー病や認知症のリスクにどのように影響を与えるかについての理解を深めるものです。

 

これまでの研究では、カフェインがアルツハイマー病や認知症リスクに対してどのように作用するのかについての結果が一貫していませんでしたが、今回の研究はそれらの強い関連性を示しています。

 

専門家によると、カフェインがアミロイドβタンパク質の形成を阻害するか、あるいは脳からの除去を助ける可能性があると考えられています。

 

ただし、これらはまだ仮説の段階であり、因果関係を証明するためにはさらに多くの研究が必要です。

 

 

注意点とカフェインの過剰摂取リスク

記事冒頭で述べたように、この研究はカフェイン摂取と記憶喪失リスクの間に関連性があることを示しましたが、それが因果関係であるとは限りません。

 

研究は横断的なものであり、特定の時点におけるデータの関連性を示すものであるため、さらなるランダム化対照試験が必要です。

 

専門家は、「カフェインの摂取が認知症予防に役立つ可能性があるが、現時点でそれを勧めるには時期尚早である」としています。

 

また、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、1日400mg以上のカフェイン摂取を避けるよう推奨しており、過剰摂取は高血圧、心拍数の増加、不安、消化器系の問題、脱水、睡眠障害などのリスクを伴います。

 

健康維持のためには、適度なカフェイン摂取が重要です。

 

 

アルツハイマー病や認知症のリスクを減らすには

アルツハイマー病の予防には、全粒食品を中心としたバランスの取れた食事、定期的な運動、そして社会的なつながりを持つことが唯一の確実な方法であるとされています。

 

特定の食品や成分が認知症を防ぐという科学的根拠は現在のところありません。

 

専門家は、「一つの食品や成分が、複雑な病気であるアルツハイマー病に対して著しい効果をもたらす可能性は低い」と指摘しています。

 

今回の研究分析の結論としては、「適度なカフェイン摂取は認知機能や全体的な健康に対してリスクをもたらさず、他の健康的な習慣と組み合わせることで安全に楽しむことができる」ということです。

 

長期的な健康を考えるなら、バランスの取れた食生活、適度な運動、そして社会的なつながりを維持することが重要です。

 

 

まとめ

・高いカフェイン摂取は、アルツハイマー病や認知症による記憶喪失リスクの低減に関連しているが、因果関係は確認されていない

・カフェインはコーヒーや紅茶、チョコレートなどから摂取できるが、過剰摂取は健康リスクがあるため、1日400mg以下が推奨されている

・脳の健康を守るには、バランスの取れた食事、定期的な運動、社会的なつながりを維持するなどの健康的なライフスタイルが重要

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