ダーウィンとウェッジウッド
前回のテーマだった“チャールズ・ダーウィンの歴史”。
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『種の起原』や『人間の由来』など後世に残る名著を記し、生物学や心理学に大きな影響を与えた人物の生き様についてまとめました。
ダーウィンの研究の裏には、彼自身の天才的な洞察力と綿密な観察研究に加え、彼を支えた多くの人の存在も忘れてはいけません。
彼の良き妻であり監督者だったエマ。
ダーウィンと共同で進化論を発表し、後にダーウィンの良きライバルとなったウォレス。
ダーウィンの才能を見出し、彼が極端に避けていた地質学を学ばせ、ビーグル号の乗船を斡旋したヘンズロー。
奴隷制度の見解について意見は対立したものの、地面の隆起と沈降の気付きを与えてくれたビーグル号の艦長フィッツロイ。
そして、彼が一生を通して研究に没頭できたのは、ウェッジウッド家の強力なサポートがあったからでもあります。
ウェッジウッド(WEDGEWOOD)と言えば、イギリスを代表する陶磁器ブランドで、磁器に興味がある人であればドイツのマイセンやデンマークのロイヤルコペンハーゲンなどと並ぶ知名度です。
自分が磁器に興味を持つようになったのも、実を言うとチャールズ・ダーウィンとウェッジウッド家との繋がりを知ったことがきっかけで、特に彼と関わりが強かったのは『WEDGEWOOD』の二代目を襲名したジョサイア・ウェッジウッド2世です。
彼は、ダーウィンの父から、「息子をビーグル号での旅に出すべきかどうか」の最終判断を委ねられた人です。
フロンティアスピリッツが旺盛なジョサイア2世は、世界を旅する冒険に大賛成だったため、出航ギリギリではありましたがダーウィンの乗船が決まりました。
ダーウィンが旅から帰ってきて間も無く、ジョサイア2世は自身が所有する土地の土の変化を考察してダーウィンに伝えており、後に『ミミズと土』を研究するきっかけを与えていたりします。(参考:【ダーウィンの歴史㉖】ジョサイア・ウェッジウッド2世によるミミズの考察)
また、WEDGEWOODのヴィンテージモデルである『ダーウィンリリー』のデザインを兄のジョンに依頼したのもジョサイア2世です。
WEDGEWOODとは
さてさて、ではダーウィンの経済的基盤となった『WEDGEWOOD』とはどんなブランドなのでしょうか。
個人的にWEDGEWOODを一言で表すとしたら「知性と品格」という言葉がピッタリだと思います。
「知性」と感じた理由は、創業当初の頃から変わらず古代ギリシャ・ローマの文化を作品として表現し、陶磁器におけるネオクラシカル(新古典主義)を確立したからです。
これは、創業者のジョサイア・ウェッジウッドのたゆまぬ努力の結果と、逆境を跳ね返す強い信念の賜物でもあります。
「品格」と感じた理由は、ジョサイアが常に歴史に敬意を払い、土を美術品にまで昇華させたフロンティアスピリッツの持ち主だったことや、ダーウィンにまで受け継がれた反差別主義が感じられるからです。
ショールームやカタログ……、当時は誰も行ってなかったプロモーションの模索や、万を超える試行錯誤の末に完成した作品など、泥臭く授業に取り組む姿勢もまた気品を感じます。
WEDGWOODの代表作と言えばやはりジャスパー・ウェア。
独自の技術に新古典主義を散りばめた傑作です。
過去にはこのジャスパーウェアを真似ようとしたものもありましたが、現在ではどれも淘汰されてしまいました。
ダーウィンが言う自然淘汰とはまた違うでしょうが、鳥のメスがオスを無意識に選別するように、人間の審美眼によって評価されたことは確実です。
次回より、たった一代で欧米の上流階級のトレンドにまでのし上がった陶磁器ブランド「WEDGWOOD」創成の歴史についてまとめていきます。
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