科学

【研究】妊娠中に食物繊維を多く摂取すると、産まれた子どもの心疾患が大幅に低下する可能性がある(モナッシュ大学)

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食物繊維と言えば、もはや健康的な食事の代名詞と呼ばれるほど浸透している栄養素です。

 

消化吸収されない“不要”な食べ物として認識されていた時代もありましたが、現在では、血糖値の上昇を抑える効果や整腸作用など、人体にとって様々メリットがあることでも知られています。

 

そんな食物繊維ですが、妊娠している女性が食べることで健康に寄与するだけでなく、お腹の中の子どもにまで良い影響をもたらす可能があることが研究で明らかになりました。(マウスによる研究)

 

今回のテーマとして取り上げていきます。

 

参考記事)

One Diet Choice While Pregnant May Protect Your Child’s Heart For Life(2024/07/28)

 

参考研究)

Maternal Diet and Gut Microbiota Influence Predisposition to Cardiovascular Disease in Offspring(2024/07/17)

 

 

食物繊維と子どもの心臓

 

オーストラリア・モナッシュ大学の研究によると、繊維が豊富な食事を行なった妊娠中のマウスから生まれた子マウスは、心臓がより健康的であり、生涯を通して心血管疾患のリスクを大幅に低下させることが分かりました。

 

同大学の生物医学科学者フランシーヌ・マルケス氏は、「私たちの研究は、食物繊維の良い影響が、母親の健康だけでなく子どもの心臓の発達にまで影響していることを示している」と述べています。

 

実験では、妊娠中および授乳中のマウスを“食物繊維の多い食事グループ”と“食物繊維の少ない食事グループ”に分けて餌を与えました。

 

マウスから生まれた子マウスは、離乳後、標準的な食事を与えられました。

 

それぞれの子マウスが6週齢に達した段階で、心臓組織にRNAシークエンシング網羅的に遺伝子発現レベルを調べる手法)を行いました。

 

その結果、高食物繊維グループの子マウスは、炎症性および免疫刺激に感受性が低く、軽微な刺激に対して心臓が強くなっていることを発見しました。

 

次に、心血管疾患に対する反応を調べるため、高血圧による臓器損傷を誘発するアンジオテンシンを投与しました。

 

すると、低食物繊維グループを与えられた母親から生まれた子マウスは、高繊維食よりも心臓の状態が著しく悪くなることが分かりました。

 

これらのマウスは、左心室の壁が厚くなり、血液を汲み上げる能力を低下させる肥大性心筋症、および心臓線維症、心臓の瘢痕組織の形成などの影響を受けやすいことを示唆しています。

 

また、研究者らは、高食物繊維食の母親と子マウスの両方がより健康な腸と腸内細菌を持っていたことを発見し、母親は低鎖脂肪酸の血漿レベルが50%高いことも分かりました。

 

食物繊維は、血流を通って胎盤にいき、胎児の腸内の短鎖脂肪酸の成長を促進し、そこで発達中の心臓の遺伝子活動を促進することに役立ちます。

 

調査結果は、母親の出生前食事の影響を過小評価していた可能性があることを示唆している一方、この結果が人間にどれだけ適応できるかを明らかにするにはさらなる研究が必要です。

 

しかし、食物繊維が人間の健康な腸と腸内に生息する微生物の維持・多様化に役立つことは明白であり、腸内細菌が体と心の健康をつくることも明らかになってきています。

 

マルケス氏は、「心血管疾患は世界中の主要な死因であり、この研究は、妊娠中の単純な食事の変化が子供に生涯にわたる利益をもたらす可能性があることを示唆している」と述べ健康的な食事を勧める理由となるとしています。

 

また、これらの結果は、妊娠中の母親が摂取すべき食事ガイドラインに、より良い証拠を提示するものでもあります。

 

調査結果はCirculation Researchにて詳細を確認することができます。

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