心理学

【歴史を変えた心理学⑱】マズローの5段階欲求理論

心理学

【前回記事】

 

この記事では、著書“図鑑心理学”と自分が学んできた内容を参考に、歴史に影響を与えた心理学についてまとめていきます。

  

心理学が生まれる以前、心や精神とはどのようなものだったのかに始まり、近代の心理学までをテーマとして、本書から興味深かった内容を取り上げていきます。

   

今回のテーマは、「マズローの5段階欲求理論」についてです。

 

 

マズローが追い求める“欲求理論”

エイブラハム・ハロルド・マズロー(1908~1970)

 

SNSをや各種メディアが発達し、常に他人と比べられてしまう今の世の中において“自分らしく生きる”ことはとても難しいことのように思えます。

 

戦後の20世紀に活躍したアメリカの心理療法家エイブラハム・マズローは、人はどのように自己実現をするのかについて研究を行いました。

 

はるか何世紀も前から、さまざまな哲学者が“幸福”とは何かを追求し、人間の生活模式や思考模式について検討してきました。

 

ある者は、倹約に努め人に尽くすことを幸福と考え、ある者は、犬のように自由に生きることを幸福と考え、ある者は、人生で一度でも心が震える経験があればそれが幸せであると考えました。

 

こういった様々な考えをまとめていくと、多くの考えに共通するいくつかの前提が見えてきます。

 

暮らしていくのに安全で快適な場所があり、食べ物が十分に得られ、愛すべき人間関係があることです。

 

一般に心理学者も、人間という動物には食欲をはじめ、満たされるべき欲求があり、そのうえで自らの存在に問題がないことを望んでいるのだと考えます。

 

しかし、こうしたアプローチは実際にはうまくいきません。

 

基本的な欲求が満たされた場合であっても、考える時間や余裕が出てくると、「それでもまだ何かが欠けている」と感じます。

 

では、それらが満たされた先で、今度はどのような欲求が生まれてくるのか……。

 

これを追求することが、マズローの目的でした。

 

 

マズローの欲求5段階説

彼は、当時まだ新しい研究分野だった心理学を通し、個人が生涯を通じて満たそうとする全ての欲求に関する理論的体系を構築しました。

 

マズローが1943年に「人間の動機付けに関する理論」にて提唱した体系では、「生理的欲求」、「安全の欲求」、「社会的欲求」、「承認欲求」、「自己実現欲求」という欲求が複数の層によって構造化されていました。

 

①生理的欲求

呼吸、食物、水、性交、睡眠、ホメオスタシス(自分の身体を一定の状態に保とうとする機能)、排泄など

 

②安全の欲求

身体の安全、家族の安全、健康の安全、財産の安全、雇用の安全、資源の安全、道徳性の安全など

 

③社会的欲求

家族との関係、友人関係、性的親密性など

 

④承認欲求

自尊心、自信、他者への尊敬、他者からの尊敬など

 

⑤自己実現欲求

道徳性、創造性、自発性、偏見の除去、事実の受容など

 

 

下4つの層は「欠乏(欠落)欲求」です。

 

欠乏欲求とは、不足していることに対して満たしたいと考える欲求のことです。

 

食物や住み家のような物を欲する欲求(物理的欲求)に加え、安全や仲間関係、自尊心のような人間の精神に関係する欲求(精神的欲求)も含まれています。

 

彼は、これらの欲求が満たされていくと、その後に「成長欲求」があると述べました。

 

成長欲求とは、自分を成長させていこうと考える欲求のことです。

 

この階層では、人は自身の審美感覚(美醜を見分ける感覚)を磨いたり、社会における自らの役割を見つけようとします。

 

また、自身の潜在的な能力を探ったり、それらの能力を最大限に発揮させるにはどうすればよいか理解したいという“欲求”、すなわち「自己実現の欲求」をもつのです。

 

マズローは、「人は、自分がなれると思う人間に実際にならなくてはならない」と主張しています。

 

欲求の階層に従うことによってより良い生き方を発見し、これまで追求し続けてきたことへの達成感や満足感を得ることができる……。

 

そんな、自己実現に向けての指針を教えてくれるのが「マズローの欲求理論」です。

 

また、晩年のマズローは、5段階の欲求を満たした先にある6つ目の段階について言及しています。

 

それは、自己超越欲求という段階です。

 

自己超越欲求は、自己実現を果たした者の中に現れ、他者に喜んでもらいたい、社会をより良いものにしたいなど利他的な欲求のことです。

 

マズローは、人類の約2%が自己超越欲求にたどり着けると述べています。

 

 

まとめ

・マズローは、個人が満たそうとする欲求について、生理・安全・社会・承認・自己実現という5つの観点を主張した

・人は下位の物理的な欲求が満たされると、上位の精神的な欲求を満たそうとすることを示した

・また、5つの欲求を満たすと、6つ目の欲求として自己超越欲求が現れることを後に提唱した

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