科学

あくびの長さは、脳の発達とニューロンが関係する

科学

  

不意にふぁーっと出てくるあくび。

 

あくびは人間だけでなく、犬や猫などの哺乳類や、鳥類などでも見られます。

 

最近の研究では、あくびが脳の冷却メカニズムとして機能しているのではないかという説が唱えられています。

 

脳の温度は、部分的にニューロン活動による熱生産もその要因の一つとされており、ニューロンが多い動物は、それだけ脳を冷やす必要があるという説です。

 

今回はそんなあくびと研究について、様々な動物のあくびを研究したお話です。

 

2023年3月19日にScience Alert掲載の記事からまとめていきます。

 

参考記事)

There’s an Odd Correlation Between Brain Size And Yawning, Study Reveals(2023.3.19)

The longer the yawn, the bigger the brain(2021.5.6)

参考研究)

Brain size and neuron numbers drive differences in yawn duration across mammals and birds(2021.5.6)

 

 

あくびと脳

 

オランダのユトレヒト大学による2021年の大規模な動物研究では、あくびについて興味深いことが明らかになりました。

 

それは、脳が大きくニューロンが多い脊椎動物ほどあくびが長く続く傾向があるということです。

 

研究者は動物園で直接観察した結果と、オンラインビデオによる調査から、55の哺乳類と、46の鳥類のあくび、合計1,291パターンのデータを分析しました。

 

全てのあくびを記録したところ、動物の体の大きさ顎の形などはあくびの長さとは関係がないことが分かりました。

 

唯一相関性があったのは、脳の大きさです。

 

キリンのような少数の動物を除き、ほとんど全ての動物があくびをするにも関わらず、その理由を完全に解明することはできていません。

 

今回、脳の大きさとあくびの関係を比較することで、哺乳類や鳥類とあくびの謎に迫ることができました。

 

  

あくびと脳の冷却

 

哺乳類は、鳥類よりも長くあくびをする傾向があることや、体の大きさに関係なく、種のニューロンのサイズと数に応じてあくびの持続時間が増加すると結論付けました。

 

鳥類のあくびが短いのは、鳥の体の深部体温が高いことから説明がつきます。

  

鳥類の深部体温と周囲の空気の温度との差は哺乳類よりも大きく、その結果、鳥の血液は周囲の空気に対して急速に冷却されるため、あくびは短くても十分です。

  

対して哺乳類は、周りの温度とさほど変わりがないため、十分なあくびをしなければ今度が変化しません。

 

これに加えて、脳のニューロンによる発熱が多いほど、あくびによる温度調節が必要になるという仮説から、脳の冷却とあくびの関係が見えてきます。

 

また、あくびをすると、口腔周囲の筋肉を十分に伸ばすことができ、冷たい空気を同時に吸い込むことができるため、脳を通る血管に冷たい血液が増加し、温度を調節するというメカニズムが考えられています。

 

2016年の研究では、人間を含む24種のあくびが測定され、最も短いあくびはマウスの0.8秒、最も長いあくびは人間の6.5秒だったそうです。

 

あくびの長さは知性にはリンクせず、脳の大きさとそれに詰め込まれるニューロンの数だと述べられています。

 

しかし、チームはなぜ子供よりも大人の方が長くあくびをするのかについて、さらなる研究が必要だとい言っています。

 

脳の冷却が様々な種に対してどのように機能するのかを知ることは、私たちの体が一般的にどのように機能するかをより良く理解するこになり、多くの分野に影響を与えると考えられています。

 

 

まとめ

・あくびは脳を冷却するための生理現象

・口腔周囲の筋肉を効率的に冷やし、冷却された血液を脳に送る

・脳が大きく、ニューロンが機能しているほどあくびが長い

 

それまで一般的にあくびは、血液を通して脳に酸素を供給する機能があると考えられてきました。

 

近年の研究では、あくびから供給できる酸素の量は、通常の呼吸とさほど変わりはしないことが分かっています。(論文内のIntroductionより)

 

目を覚ますために多くの酸素を必要とされていますが、私たちが得る睡眠の量とあくびの頻度の関係性も薄いことが分かっています。

 

今回紹介した脳冷却説は、以前から唱えられている説でしたが、酸素供給説に置き換わるように、近ごろから注目されています。

 

この研究から、睡眠時の脳の温度変化のメカニズムがより解明され、スムーズな睡眠導入や、すっきりとした起床ができるようになるかもしれません。

 

今後、私たちの生活にも関わってくる研究になる可能性がありますね。

 

以上、あくびと脳についての研究のまとめでした。

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