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睡眠不足は寛容さを失わせる

生活

以前、「他人に親切にすることで鬱が改善」という旨の記事についてまとめました。

 

うつ病の患者に対して、親切な行動、社会活動、認知行動療法のうち、症状の改善にどれが最も効果的だったかについての研究まとめです。

 
結果、他人に親切な行為をしたグループが最もうつ病の症状を改善できたとされています。

 

今回は、そんな他人への親切にする寛容さを失わせてしまう“睡眠不足”についての研究のお話です。
  

2022年8月23日、Science Newsに掲載された記事からまとめて行きます。

 

参考記事)

Sleep deprivation may make people less generous

 

参考研究)

Sleep loss leads to the withdrawal of human helping across individuals, groups, and large-scale societies

 

 

睡眠不足と助け合いの減少

 

カリフォルニア大学は、睡眠不足が個人内、グループ間、社会全体において、助け合いをするかどうかを決定する要因の一つであることを示しました。

 

個人内においては、一晩の睡眠不足が、ある個人から別の個人への支援する意欲の低下が見られました。

 

グループ間においても、数夜に渡る睡眠時間の減少は、日々付き合う中でお互いを助けるという意欲の低下が見られました。

 

300万人以上の大規模な社会実験では、サマータイムへの移行によって引き起こされた1時間の睡眠時間の喪失が、寄付行為などの現実世界の利他的支援を減らすことが示されました。

 

これらのことから、睡眠不足は、人間が互いに助け合うことを選択するかどうかを決定する要因の一つであると報告されています。

 

 

研究の概要

研究チームの神経科学者Eti Ben Simon教授は、睡眠不足と寛容さとの関連性を確認するために、あるテストを行ないました。

 

テストでは、23人の若者を研究室に2泊させました。

 

参加者は一晩は中眠り、もう一晩は起き続けます。

 

その翌日の午前中に、見知らぬ人や知人を助けるシナリオシートを見て、どう行動するかをアンケートに回答しました。

 

その結果、参加者の約80%は休んでいる時よりも睡眠不足の方が、他人を助ける可能性が低いことを示しました

 

次に研究者は、MRIで脳をスキャンし、参加者の神経活動を安静時と睡眠不足の状態で比較しました。

 

Sleep loss leads to the withdrawal of human helping across individuals, groups, and large-scale societies より

 

結果は、睡眠不足の参加者は他人に共感する能力に関係する脳領域のネットワークの活動が減少していることが確認できました。

 

別の実験では、136人の参加者をオンラインで募集し、4回の睡眠記録をつけてもらいました。

 

その後、各参加者に、他人を助けるかどうかを調べるアンケートに答えてもらいました。

 

その結果もやはり、ベッドで起きている時間が長い(睡眠不足)ほど、他人を助ける行動をする意欲が低下していることが分かりました。

 

サマータイムに焦点を当てた実験では、2001年から2016年までに米国全土の学校支援のために資金を調達する非営利団体への慈善寄付の推移を調べました。

 

チームはハワイアリゾナおよび非常に大きな寄付などの外れ値を除外し、340万円を超える寄付を抽出しました。

 

これを分析したところ、サマータイム変更前の寄付が1日あたり平均82ドルであったのに対し、変更後は1日あたり平均73ドルまで減少したことが分かりました。

 

Ben Simon教授は、「現代社会における慢性的な睡眠不足は深刻な問題です。人々が必要な睡眠を得ることができれば、私達が住んでいる社会にどれほどの影響を与えることができるでしょう」と述べています。

 

ノースカロライナ州アパラチア州立大学の高度経済学者David Dickinson氏は、「睡眠以外の何らかの変数が寛容さの低下を引き起こしている可能性は常にある」と述べながらも、「これによって、非効率な睡眠が他人を支援するという意思決定について、どのような影響があるかについて俯瞰した見方ができる」と述べています。

 

  

まとめ

・睡眠不足は他人を助ける意欲を失わせる

・個人を助ける場合、グループを助ける場合、社会的支援全てに当てはまる

・睡眠不足の改善によっていくつかの社会的問題を解決する可能性もある

 

日本はOECD(経済経済開発機構)の中でも最も睡眠時間の短い国とされています。

 

日本人の7割が睡眠不足? 親子で知りたい、睡眠のリズムを整えるコツ より(2022年時点)

 

また、フィリップス・ジャパンによる調査では、日本人の7割十分な睡眠をとることができていないという結果が出ています。

 

1日に4時間半しか睡眠を取れていない状態が5日間続くと、うつ病や統合失調症に似た脳機能の変化がみられることも、過去の研究から分かっています。(参考:サイエンスポータル

 

寝れないことで、精神が不安定化し、寝れないことで他人への配慮も欠け、精神を安定させるきっかけも失っていく……。

 

働きすぎ、夜中までスマホやパソコンを見る、日が出てから寝はじめるなど、睡眠不足の原因は人によって様々ですが、しっかり睡眠をとる生活を心がけたら、精神的な問題や、人付き合いの問題などは改善できるかもしれません。

 

どうしても寝不足から抜け出せない場合は、環境を変えるというのも大きな選択肢になると考えます。

 

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