文学

【要約】もうすぐ絶滅するという紙の書物について

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今回はエーコ氏とカリエール氏が綴った、本に対する考え方をまとめた、もうすぐ絶滅するという紙の書物についてという本についてまとめていきたいと思います。

 

二人の読書家の対談本

この本は、ウンベルト・エーコとジャン・クロード・カリエールという二人の読書家が、紙の本に対する考えを対話形式で述べ合うという内容です。

  

(左)ウンベルト・エーコ、(右)ジャン・クロード・カリエール  

  

この二人が紙の本に対する考えや愛について語ります。

  

しかし、もうすぐ絶滅するという紙の書物についてというタイトルに対し、目次の一番最初の項目は、「本は死なない」です。

 

その項では、ラジオやテレビや映画が本から何も奪わなかったように、スプーンやハサミがすでに完成された発明でありそれ以上の使い方をされないように、本は本であり続けると言っています。

 

そんなエーコとカリエールの対談から、印象に残った部分を要約&まとめていこうと思います。

 

  

「耐久メディアほど儚いものはない」

フロッピーディスク、CD-ROM、DVD、USBなどの耐久メディアは、それらを出力する機器に依存してしまいます。

 

つまり、フロッピーディスクを再生するPCがほとんど使われていないのと同様に、CDやDVDを再生する機械が、あるいは保存された形式を再生するアプリがなくなれば、その耐久メディアはそれまでということになります。

 

それに対し、紙は数百年たった今でも現在まで残り続ける完成された記録媒体なのです。

 

  

コンピュータを使うことは是か非か

アメリカの文壇に、コンピュータで文章を書くことに批判的な一派がいました。

  

彼らは、「画面写される文章は既に完成されたような印象を与えてしまい、批評や修正の対象にし難い。」という意見を持っていました。

  

逆に、コンピュータでの推敲支持する一派も現れ、「画面に写っている文章は既に自分の文章ではない。だから思いきり獰猛に批判することができる。」とコンピュータに肯定的な意見もでてきました。

  

時代が変われば手法も変わる、肯定する人も入れば否定する人もいるのは本の移り変わりにおいても変わらないようですね。

 

  

傑作が傑作であるために

エーコは「傑作は作られたときから傑作なのではなく、人に認知されてこそ傑作になる」と主張しています。

  

つまり、多くの人に作品を読んでもらい、その作品が生んだ解釈と強い個性が新たに認知されていけば、傑作は傑作として世に放たれるというワケです。

 

知られざる傑作は、読者が足りなかったことで十分に認知されなかったし、十分に解釈もされなかったということですね。

 

独自性と認知と口コミの関係に似ていますね。

  

自分がよく参考にしているマーケティング本でも同じようなことが書いてありました。

 

良い物を生み出すだけでなく、どう認知されるかは本に限った話ではないようですね。

 

  

人類が消えた後、宇宙人に危険を伝える方法

本による過去とのコミュニケーションの話をしているとき、「埋めてある放射性廃棄物の危険を伝える方法が分からない」という話題に入ります。

  

数十年数百年という単位ではなく、人類が地球から姿を消した後、宇宙からの来訪者に何万年も続く放射能の毒性を伝える術が分からないと言います。

  

どんな言語も絵文字的なものでさえも、時が経ってしまえば正確に理解されないことは、有史以来の壁に書かれた図像が物語っていますね。

  

最終的な結論は本書に出ていませんが、確かにどうしたら万人に伝わる表現ができるのでしょうね?

  

極限環境下でも耐えうる記録デバイス、メディア、場所などが発見されたら、それこそ人類を半永久的に記録できるかもしれないというロマンが広がりますねぇ。

 

  

死んだあと、蔵書をどうするか

カリエールは、「自分が死んだあとの本たちの行先は、妻や娘が決めるだろう」と言っています。

 

死後の贈り物として、「いくつかの本を指定した誰かに渡すことはあるかもしれない」と、いくつかの本の所有権は然るべき人に渡ることを望んでいるようです。

  

エーコは、「バラバラにしないで欲しい」ということでした。

  

本をオークションに売りに出したり、公共図書館に寄贈したりすることは良いらしく、そうなったとしても決して本のページを切ったりせず、一つの本として手放すことが条件だそうです。

  

二人なりの本への愛が伝わってきますね。

  

ちなみにエーコは、自宅が火事になったら本ではなく250ギガバイトのハードディスクを持って逃げるそうです。

 

  

最期に

電子書籍でどこでも読める時代に敢えて紙の本を買う。

 

この二人の対談を読み、本の読み物としての価値と共にコレクションとしての価値についても考えるようになりました。

  

電子書籍は膨大な情報量というかなり強い利点があり、紙の本ではページを行き来したり、書き込みをしたりと一冊の利便性が高いメリットもある。

 

紙の方が本に対する理解度が高いという研究もあるくらいで、必ずしも電子書籍優位な時代ではないなと感じました。

 

実際、このもうすぐ絶滅するという紙の書物についてを電子書籍で読んでいたら、読むのにもっと時間がかかった思います。

  

そうは言いながらも、電子書籍は家にいながら即読みたい本だ読めるというメリットもあるので、それぞれのメリットを上手く活用しながら本と接していこうと思います。

 

以上もうすぐ絶滅するという紙の書物についてのまとめでした。

 

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